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明けないでと願った夜もいつしか朝を迎えていた。薄く色づいた空、冷えた空気が肌を刺す。
まだ薄暗く、ネオンの灯るホテル街を歩く。学校があるから、と心で言い訳をしながら部屋を出てきてしまった。起きた彼に理由を尋ねられるのが怖くて。
終電を逃したから、酔った勢いで、なんとなく、とでも答えればいい。そんなことはわかってる。だけど、今の私には上手く伝えられそうもなかった。余計なことまで口にしてしまいそうで。
もぬけの殻となった繁華街。散らばるゴミを避けて進む。
まだあの人の感覚が身体に残っている。触れた唇のかさつきも、耳元で囁く声も、合わさった箇所から広がる熱さえも。一生消えないような気さえして、吐息を漏らした。
のろのろと足を動かせば、すぐ駅に着いてしまう。夢から、醒めてしまう。
送信した「ごめんね、先に帰ります」の一言。しばらく眺め、トーク一覧から左にフリックして、削除する。彼からのメッセージを待たないように。
希望を持ってはいけないとわかっていても、望んでしまう私はきっと馬鹿だ。
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