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じりじりと身を焦がす八月の日差しに炙られたコンクリート。肌に触れているそれは痛いほどに熱を持っていた。
休日に部活があるのはいつも通り。でも、観月が私一人を呼び出すのは珍しくて。他のマネージャーに仕事を任せ、少し不安になりながら彼についていった。日々のマネージャー業で何かやらかした覚えはない。だとすれば他に何か、彼の怒りに触れるようなことをしたんだろうか。
頭を悩ませていれば、いきなり立ち止まった彼に壁へ押し付けられて。そこからずっと無言を貫かれている。
ここは使われていない部室棟の裏側。剪定されていない樹木が周囲を覆うこの場所は、人目につき辛い。それでも、あまり遅いと誰かが探しに来てしまう。何故かはわからないけれど、見つかるのはまずい……気がして。
「み、観月……? そろそろ戻らないと吉朗たちが」
「……また赤澤ですか」
恐る恐る幼馴染の名前を出してみれば、絞り出すように低い声が返ってきて。まずい、地雷を踏んだかもしれない……喧嘩でもしているんだろうか。
「また、っていうか……ほら、あいつ一応部長だし」
「そうではなくて、……」
気まずさから言い訳をすれば、目を伏せて言い淀んだ観月。掴まれた手首が熱い。その力強さに、今までにない男らしさを感じて――。
狼狽えた私は彼から視線を逸らし、好き放題に生い茂った低木に八重咲く濃い桃色に目を留める。桃に似た花と竹に似た葉を持つこの木は、何というんだっけ。
現実逃避を始めた私は気づいていなかった。この危険な男が、思いつめて何をしようとしているのか。
「油断しすぎなんですよ、あなたは」
「っ、!」
花の名前を思い出した次の瞬間――観月の唇が、私の薄く開いた口元に深く食い込んだ。
どうして、と問う暇など与えられず。身動きが取れない私をいいことに、彼の舌が腔内を抉る。
……その毒を、体の奥底へ注ぎ込むように。
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