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サソリが私の身体に触れる。冷たい指が肌をなぞってゆく。まるで私が本当にそこにいるのか、確かめているみたいに。
私はただ、それを受け入れるだけ。
「お前は、どこにも、……」
躊躇った彼が言葉を飲み込む。代わりに、より強い力で腕を掴まれた。痛みはないけれど。
サソリが里を抜けて、幼馴染みだった私はそれに着いていった。彼を放っておけない、一人にできないという一心で。
彼と同じ傀儡の身体になることが条件だったけれど……それでも構わなかった。
唇を重ねられる。絡む舌すらも冷たく、流れる唾液はない。
この行為に意味はない。人形ふたりが慰めあっているだけの、非生産的なもの。
きっと誰よりも人間であった男、その心は壊れてしまった。優しく笑う子どもの姿はもうどこにもない。
「どこにも行かない。ずっと一緒だよ」
私が吐いた言葉は誓い、この残酷な世界の中では何より薄っぺらい響きのもの。それでも安心したように表情から力を抜くサソリに、私も精一杯の笑顔を見せた。
お題:月にユダ様
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