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「見つけた……っ」
「……」
夜の森。虫と鳥の僅かな鳴き声が響く。月明かりに照らされている私と、男が一人。距離を縮めるべくもう一歩踏み出せば、相手はようやくこちらを見てくれた。
高くなった身長。研ぎ澄まされた顔つき。私の元恋人――イタチは、あの時より美しく成長していた。
「ずっと、アナタを探していたの」
額当てに入った一本線。黒地に赤い雲の模様が入った外套。こちらを一瞥する冷たい視線。そのどれもが、初めて見るものだった。
イタチとは幼馴染みだった。私はうちは一族ではなかったけれど母親同士が仲がよく、アカデミーに入る前から付き合いがあった。一緒にいる時間が長かったこともあり、私はいつしか彼に惹かれていった。そして幸運にも彼も同じ気持ちを抱いていると知り、交際を始めた。
イタチはいつも優しかった。悲しいことがあると頭を撫でてくれる、その手の温かさが好きだった。ずっと一緒に居られると思っていた。
――あの日までは。
「教えて。……あの日、何があったの?」
うちはイタチによる一族殺し。残されたのは彼の弟だけ。そのニュースを聞いたときから今まで、ずっと後悔していた。規律違反を犯し、勝手に里を出て彼を探すほどに。
何故気付けなかったのか……何故あんなことをしたのか。何故、なぜ。
――彼に、何があったのか。
イタチがこんなことをするはずがない。その一心で今まで彼を追ってきた。私の……大切な人を。
「どうして何も言ってくれないのよ……!」
「お前には関係ない」
すげなく返され、強く唇を噛む。無力感と焦燥感に苛まれる。
ねえ、どうしてそんな顔をするの。隠しているつもりだろうけれど、あれだけ一緒にいたんだもの。
私が何もわからないとでも、思ってるの?
「イタチ……」
突き放すならちゃんと突き放して。今ここで、殺してよ。
でないと、私、いつまでも嫌いになれない……追い求めてしまう。あなたを、永遠に。
「……もう、眠れ」
冷辣な赤い瞳、そこに閃く三枚刃の手裏剣。僅かだけれど苦しそうに歪められた彼の表情。
――そこに、私が好きだったあの笑顔は失くて。
唇が動く。その四文字を読み取る間もなく、私の意識は途絶えた。
お題:エナメル様
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