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※ オビ→リン前提
あなたは、愛を囁きながら私を抱く。
私はそんなあなたを、心底嫌悪している。
「……来い」
腕を掴まれたと思ったら、寝台に投げ飛ばされる。そこに優しさなど欠片もない。
彼の幾つかある隠れ家。その内のひとつ……お世辞にも綺麗とはいえないこの部屋に呼ばれ、深夜だというにも関わらず大人しく来てやったらこの仕打ちだ。一つしかない裸電球、その心もとない灯りが瞬いた。
「相変わらずね。少しは優しく……っ、痛」
「黙れ。……無駄口を叩くな」
抗議しようとすれば、着けている仮面をずらした男に首筋に噛み付かれる。耳元で凄まれ、その声の低さに身震いをした。この男と自分の力量差は理解しているつもりだ。
彼――トビと名乗る男と私の、この不毛な関係。S級犯罪者集団“暁”の情報収集のため近づいた男に、私が敗北したことが全ての始まりだった。殺されるかと思ったが、何の気紛れか……呪印札を身体に仕込まれ、任務の切れ目に愛娼として呼ばれる。逆らうことはおろか、他言すらできない。私は仮面の奥の素顔すら、まともに見たことはないというのに。
服も下着も破くように全て剥かれ、あっという間に裸にさせられる。そのまま髪を掴まれて、思いきりシーツに押さえ付けられた……と思ったら、慣らしてもいない秘所に屹立を突き立てられた。
「っひ……あぁ、ア!」
悲鳴に近い喘ぎ声で痛みを訴えても意にも介さず、彼は腰を押し進める。いつも通り、自らの快楽だけを追い求めた律動。ただ私の頭を撫でる手だけは優しい。
「愛してる……」
「……は」
そして、愛を囁く声音もまた……優しく、甘い。あんなに乱暴に事を進める人間だとは思えないぐらい。私は恐らく誰かの代わりにされている、のだろう。相変わらず、人を人とも思っていないような処遇だ。本当に反吐が出る。
――だからこれは、ちょっとした意趣返し。
「オビト」
「――な、」
何のことはない。トビという名前……恐らく偽名であろうそれを逆から読んで、頭にオ”を付けただけだ。ただの思い付きだし、外れなら外れでよかった。少し恥をかくだけだから。
だけど相手の反応を見るに、どうやら当たっていたらしい。男は絶句し、仮面の奥の目が見開かれていた。
普段私を愚弄してばかりの男の驚く様。それがとても、愉快だった。
「アハハ! あなたでもそんな顔、をッ――!」
「ク、ソ……!」
「ウ、ぐぅっ……! か、は……ッ!」
喉元を掴まれ、勢いよく締め上げられる。
苦しさから、暴れてなんとか手を離させようとするけれど、渾身の力で押さえつけられてしまえば私にはどうすることもできない。次第に頭がぼんやりとし、意識が遠退いてゆく。
私が最後に見たのは、憎悪に満ちた赤い瞳だった。
そのまま気を失ったらしい。目を覚ましたらもう朝で、部屋には誰もいなかった。顔を洗うために洗面台へ向かい、その鏡を見てみると首には指の痕がくっきりと付いていて。死ななかった……殺されなかったのは幸運だった、とほっと胸を撫で下ろした。もう二度とあんな真似はするまい、とも思ったが。
それ以来、“オビト”から呼び出されることは、なかった。
第四次忍界大戦。その宣言をし、世界を相手取った男、トビ……いや、うちはオビト。
私のことを自分勝手に扱い、散々蹂躙してきたあの男が――死んだらしい。
これは報いだと。笑おうとしたけれど口角が持ち上がらない。私はそのまま、ズルズルとその場に座り込んでしまった。
あなたは、愛を囁きながら私を抱いた。私の茶色い髪を慈しむように撫で、他の人を思い浮かべながら。
私はそんなあなたを、心底――。
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