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夜空に一粒、流れる光。
どんなに手を伸ばしても……届かない。
「何してる」
「あ……マダラ兄様」
離れの屋根の上で一人座り込んでいたら、後ろから声を掛けられる。振り向けばそこには、灯りを片手に持ったマダラ兄様が立っていた。私とイズナ兄様にしか向けられない柔らかい表情が、少しだけこそばゆい。
「ちょっと眠れなくて……」
「落ちたりしたらどうする。危ないだろ」
「大丈夫だよ」
「全く、お転婆が……っと」
苦笑したマダラ兄様が片手だけでひょいと私を抱え上げる。抗議する暇もなく、兄様は私を抱えたまま地面に降り立っていた。
「ほら、星ならここからでも見えるだろ。あまり兄を心配させるな」
「う……ごめんなさい」
縁側に降ろされ、そこにどっかりと座り込んだマダラ兄様の隣に同じように座る。星空はさっきより遠くなってしまったけれど、兄様が一緒に居てくれる方が嬉しくて、上機嫌になりながら口を開いた。
「そういえばさっき、流れ星が見えたの」
「へェ……何か願ったのか?」
「うん! えっと、ね」
私と同じ色の髪がさらりと揺れた。優しい目線がこちらを向いている。提灯のぼんやりとした灯りに照らされた慈愛の表情は、身内ながらとても綺麗に見えた。
「マダラ兄様の願いが、叶いますように……って」
はにかみながら口にすれば、マダラ兄様が驚いたように目を見開いて。その後ゆっくりと破顔した。
マダラ兄様が平和な世界を望んでいることを、私は知っている。昔こっそり兄様が教えてくれたから。今でもその願いは変わらず、マダラ兄様の根底にあるということも。
私は女だから、戦や忍術のことは何も知らない。それでも、争いがなくなればいいと思う。マダラ兄様やイズナ兄様が傷つかず、幸せであれる世界になればいいと。そんな思いを込めて、マダラ兄様に微笑みかけた。
それは、懐かしくてやさしい、ある日の出来事だった――。
「今のオレにはもう……兄弟は一人もいねェ……ただ一人残っていた妹も殺された。お前ら千手一族にな……だからお前らを信用できねェ……」
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