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※ オビ→リン前提
「なまえ……っ」
仮面を取り落とすガランという音。震える指先がわたしの頬を捉える。
歪んだ表情。瞳が確かに絶望の色を灯していて。
それに苦笑した。
「どうして、そんな顔してるの」
「……オレ、は」
何かを呟こうとして詰まる男。
オビト――わたしの初恋で、最愛のひと。同じ里、同じ忍者アカデミーの同期……わたしと彼の繋がりはそんなもので。だけどいつも真っ直ぐだったオビトに、わたしはいつしか惹かれていった。そんな彼は神無毘橋の戦いで亡くなったと聞いていたから、任務先で偶然出会った時は驚いた。そのまま彼に着いていって、里を抜けて。オビトの夢の賛同者として、彼の手足となって下される任務をこなした。
でも。どう頑張っても、何をしても……オビトがわたしのことを見てくれることは、ない。
清廉に笑う茶髪の女の子、そのきれいな笑顔を思い出した。あんなに穢れなく、無垢には……あの子の代わりには、何をどうしたってなれない。そんなことはわかってる。わかってる、けれど。
最期にそんな顔を……堪えるような、辛そうな面持ちで抱き寄せられたら、期待してしまうじゃないか。
「ねえ、おねがい、笑って」
「……っ」
わたしの破れた腹から漏れ出た血が彼の手を汚す。油断していた訳じゃないけど、全員殺せはしたけれど、結果としてわたしは致命傷を負ってしまった。命じられた任務の完遂はできたし、彼の元へ戻ることだってできたけれど……もう限界みたいだ。
痛みで引き攣る頬を必死に上げる。するとオビトは呆気に取られたような表情を見せた。ああ、昔のオビトみたいだ。私が好きになったオビトみたい。
――わたしも幸せな世界に行きたかった。あなたの夢の世界へ。
……ううん、違う。あなたと、幸せになりたかった。
ぼやけ始めた視界。ああ、なんだか眠くなってきちゃった。オビトは、笑ってくれただろうか。わたしは、笑えているだろうか。
眠気に抗えず、わたしはそのまま、目蓋を閉じた――。
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