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彼が私の頤に手を添えたのを合図に、唇が触れ合う。そっと薄目を開け、美しいそのかんばせを堪能しながら柔らかいそれを食んだ。すっと通った鼻筋に肌理の細かい肌。射干玉の闇のような髪に、同じ色をした睫毛が目元に影を作っている。
艶やかなその容姿は人の目を引く。私も最初は彼の見目の良さに惹かれた。でも今は、違う。真っ直ぐなその芯、何処までも気高い魂……その全てを好きになってしまった。真実に触れることも許されていない私が言っても、説得力がないかもしれないけれど。
冷たい手が性急に服を剥ぎ、肌の上をなぞるように這ってゆく。そんなに柔な質じゃないのに、彼はいつも壊れ物を扱うように私に触れる。もどかしくて熱い息を吐けば、彼が悪戯に笑った。
ねえ――もうこれ以上優しくしないで。大切なものを扱うように、丁寧な手つきで身体を拓かないで。私のことを好いてくれているのだと、勘違いして……期待してしまうから。
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