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※ オビ→リン前提
はあ、と息を吐けば白く色づく。骨身に染みるような寒さにぶるりと体を震わせた。分厚いマントを羽織っているのにここまでとは……。落ち始めた太陽は今日最後の一筋の光を放ち、完全にその姿を隠そうとしていた。
確かこの辺りだったはずだ。辿り着いたその場所は更地と化していて、どれだけ激しい戦闘があったかを窺い知ることができる。
ここは……うちはオビトが世界を相手取って第四次忍界大戦を始め、うちはマダラに取って変わられ、更に裏切った黒ゼツにより復活した大筒木カグヤが現れるまでの間、最終決戦地となった場所だ。
うちはマダラの駒として散り、また最終決戦への貢献を認められたうちはオビトは、戦争の発起人や暁の真の黒幕、人柱力を含めた人々を大勢その手にかけた大罪人ではなく……うちはマダラ、ひいては黒ゼツの犠牲者……また六代目火影の友として葬られたそうだ。
――けれどそんなことは、私にとってはどうでもよかった。
持ってきた白百合の花束を一段と荒れた場所に落とす。彼がこんなもので喜ぶとは思えなかったが、暁のアジトに飾られていたその花に少しだけ反応していたから。なにか特別な思い出でもあるんだろうか、と思ったが詮索はできず、結局聞けずじまいだった。
うちはオビトは、私が仕える主だ。仮面を被りうちはマダラと名乗っていた彼に暁へと勧誘され、冷酷な光を宿した写輪眼に射貫かれた私は、暁への加入ではなく彼に付き従う直属の部下になることを選んだ。
――彼の為なら文字通り、何だってできた。何だって犠牲にできた。
最後まで本当の名前も、仮面の下の素顔さえ教えてもらえなかった。その程度の存在だったけれど……構わなかった。例え利用されているだけでも、使い捨ての駒であっても、他の誰かのことを想っていても……あなたの傍に居られれば、それでよかった。それで、よかったのに。
いっそう冷たい風が体を刺すように吹いて、百合の花弁が震える。私はただじっと、その様子を見つめていた。
大戦が終わって一年が経ったけれど、未だにあなたが死んだという実感が湧かない。言葉にすることすら、怖い。
まだこの世界のどこかに居るんじゃないか。私の前に姿を現さないだけで……まだ生きているんじゃないか。そう錯覚してしまう。置き去りにしないで、私のことも連れていって……そんな我が儘なことを考えてしまう。
未練たらしくて、愚かで、馬鹿みたいだけれど……確かな気持ち。
――こんなにも深く、遠く、あなたを愛している。
ぎこちなく視線を逸らせば広がる、彼の髪色と同じ藍。その裾に、沈んだ太陽の残り火がうっすらと滲んでいた。
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