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「はたけカカシを落とせ」……簡単に言えばそういうことだった。滝隠れの里のくの一である私に、上役が直々に下した指令。いわゆる色任務だ。
第三次忍界大戦から十年余り経った今でも、滝隠れと木ノ葉隠れの仲は良いとは言えない。次の戦争がいつ始まるともわからない。その前にできることはしておきたい……そういった思惑があるのだろう。情報を引き出すことが第一、暗殺できれば上出来と伝えられた。
了承した私は手渡された書類を眺める。情報らしい情報はビンゴブックで見たことのある顔写真と年齢や身長ぐらい。これは大変な任務になりそうだ、と溜め息をついた。
それが6ヶ月ほど前のこと。長丁場になることは予想していたが、まさかここまでとは……。偽名で木ノ葉隠れに田舎から働きに出てきた娘を装って潜入し、はたけカカシに接触。そして肉体関係を持つところまではこぎ着けられたが、依然何の情報も得られていない。せいぜいマスクの下の素顔ぐらいだ。
「ねえ、何考えてるの」
「……別に、何も」
「嘘つき」
表情を隠すようにカカシにごろりと背を向ける。互いに裸体を晒し終えた後だから、もちろん恥ずかしさからではない。すっかり見慣れてしまったアパートの一室、その壁が目に入った。最初は私の家に来てばかりだったが、少し前からカカシの家にお邪魔することが増えた。少しは心を許されていると思いたいが、何をするにも一緒なので荷物を漁ったりはできていない。ちゃんと警戒はされているようだ。
背中にぴったりとくっつく素肌。腕を回して抱き寄せられ、耳元でカカシがささやく。
「最初はあんなに情熱的だったのに。もしかしてオレ、飽きられちゃった?」
「やだ、そんなわけないでしょう?」
「じゃあ疲れてる?」
「うーん……それは、あるかもしれません」
笑みを形作った唇が否定のち肯定する。カカシから見えているわけはないけれど、もう癖のようなものだ。
でも確かに、終わりの見えない任務に疲れは感じている。そろそろ潮時かもしれないとも思う。半年も使ったのに成果なしとは……房中術を訓練し直す必要があるだろう。その前に、里に戻った際に無能だと切り捨てられなければいいけれど。
「ほら、こっち向いて」
言う通りにすればもう一度引き寄せられ、唇を塞がれる。隙間から侵入した舌に咥内を犯され、それに応えればカカシの目が甘やかに細められた。とろけるようなキスが終えられ、耳へと滑る唇。再び与えられるだろう快楽に期待して胸が脈打つ。
「なまえ」
不意に、呼ばれた。
耳朶を打つ名前は、それは、わたしの、
「だ、れのことですか?」
寸でのところで表情を保ち、ついで苦く変化させる。
動揺するな。今の私はなまえじゃない。その名をカカシの前で名乗ったことなどない。潜入用の名前を頭の中で唱える。大きく脈打つ鼓動の音で感づかれてしまいそうだった。
「他の人と間違えるなんてカカシさんらしくな、」
「間違えてなーいよ。でしょ?」
――なまえ。ともう一度名前を呼ぶその声は、先程までと何ら変わらない。甘いままだ。
だから、怖い。
身を捩り、腕の中から抜け出そうとするも動けない。むしろ身体を締め付ける力がより強くなった。
「気づいてないと思ったの? 滝隠れの暗部、なまえちゃん」
「……何のことか、わかりません」
「往生際悪いね……まっ、いいけど」
里と所属すらバレているなんて。冷や汗がどっと流れる。
だけど目の前の男は相変わらず柔和な笑みを浮かべていて、殺気などが発されているわけでもない。こんなに無防備な状態で殺されないなんて意味が……狙いが、わからない。
「無防備すぎるし、気持ちいいことにも弱いし……色任務向いてないんじゃない?」
「なっ……ふ、ァ!」
「ホラ、こんなことで声上げちゃって。木ノ葉の忍だったら合格あげられないよ」
腹の上を滑っていたカカシの手が股座に辿り着く。未だ湿り気を失っていない秘部を指でなぞられ、思わず声を上げてしまった。
目にも止まらぬ速さで両手を頭上で纏められて。更にもう片方の手でベッドの下を漁ったと思えば、そこにあった紐で縛って封じられ、身動きが取れなくなる。そんな私の上に緩慢な動作で跨った男。淫裂に添えられた熱の存在を知覚し、何度もシてきたことなのに恐ろしさで背筋が震えた。
「や、やめ……っ」
「そんなに怯えないでよ。なまえだって好きでしょ……っ」
「あぁ、あ――ッ!」
一気に最奥まで貫かれ、背中を反らして法悦に耐える。なんとか堪えたけれど、今にも達してしまいそうだった。
嫌なのに、駄目なのに……どうして、私は。
「敵に犯されて、嫌なのにこんなに感じちゃうの?」
「っ、かんじてな……んあっ! だ、めぇっ」
「嘘ばっかり……今までの任務もそうだった? ……妬けるなぁ」
「っあ! いや、やだぁっ」
自己完結したカカシの右目が細められる。同時に、ゆるやかだった腰の動きが激しくなり……あっという間に絶頂が近くなる。一度は堪えられたが、もう、無理だ。
「や、ぁっ……イ、っちゃう! イっちゃうからぁっ」
「もう? 相変わらず淫乱だね」
何度も言われた言葉なのに殊更恥ずかしく感じるのは、互いの立場を改めて認識したからだろうか。化けの皮を剥がされてしまっては、演技だからだと自分の心を誤魔化せない。
「イく、っイっちゃ、――ぁ!」
そのまま追い詰められた私は、簡単に絶頂してしまう。脳の奥が甘く痺れ、眼前がちかちかとホワイトアウトする。ああ、こんな、どうして。
硬直した身体が次第に弛緩し始める。目尻から溢れた涙が、悔しさを含んで流れ落ちた。
「はは、可愛い……どうしてオレが、マスクの下を見せたんだと思う?」
「っしらな……あぁっ」
ゆるゆると律動を続けながらカカシが問うてくるけれど、絶頂後のとろけた頭では何も考えられない。かぶりを振る私にカカシが口づける。抵抗もできず舌を甘受していれば、低く笑われた。
「ごめーんね。もう手放してあげられないみたい」
「んうっ、なに、が……ぁ」
抽送を止めたと思ったら、腰を押さえていた手が頬を撫でた。慈しむようなその手付きに、背筋が震える。
「お前が悪いんだ。こんなにオレを夢中にさせて……」
「どういう……っ」
カカシはそれには答えず、私にもう一度キスを落とす。そのまま手をグズグズに蕩けた下半身に伸ばした。
「っやめ、もう、ほんとに」
「“私は滝隠れのスパイです”って」
「え、っ」
「ちゃんと言えたら……認められたらやめてあげる」
絶句する。そんなこと、言えるわけがない。何とか誤魔化さなければ、と回らない頭で考えている内に、陰核に指が添えられ慌てて制止の声をかける。
「っだめ、今ソコ、されたらっ……!」
「されたら、どうなっちゃうの?」
「っ……それ、は」
言い淀んだ隙に、カカシの指が剥き出しになった花芽を摘まむ。たったそれだけで身体に電流が走り、達してしまいそうになる。
言うしかないんだろうか。いや駄目だ。自らバラしてしまうなんてありえない。
だけどもう、こんなの……耐えられない。カカシにだってバレているみたいだし、意地を張り続けていても仕方ないんじゃないか……そんな甘い考えが過る。そうだ、だから……仕方ない。
決して責め苦に屈したわけではない。そんな言い訳に脳内を支配され、私は口を開いた。
「わた……わたし、は」
「なぁに? 聞こえない」
「私は、滝隠れのスパイで……すぅっ、――ア!?」
「はは、ホントに認めちゃうんだ」
意地の悪い笑みを浮かべたカカシが、一層強く陰核をつねる。いきなりのことで我慢する暇もないまま達してしまい、目の前が再び真っ白に染まった。
「っ、締まるね……またイったの?」
「なんでぇっ、やめてくれるって、ア、ぁ!」
「嘘に決まってるじゃない。敵里の忍の言うこと、信じちゃダメでしょ……っ」
からかうような口調とは裏腹に、律動が再開される。嘘つき、最低だ、悪趣味だ……そう罵りたいのに、口から出るのはいやらしい喘ぎ声ばかりだった。
じっくり抜き差しされたと思ったら、子宮口を捏ねるように虐められ……私はただその快楽の重さに翻弄されるだけだった。何度も何度も昇り詰め、甘く熟れた秘部を責め立てられ……抵抗するどころか何も考えられなくなる。今までのセックスも十分激しいものだと思っていたけれど、まさかそれ以上があるなんて……。
「あ、っまた、またイくぅっ……!」
「ちょっとだけ……っ我慢してよ、そしたらオレも、イくから」
まだ余裕ありげな表情、しかしその黒い瞳は、燃えるような情欲の焔を灯していて。例え片方だけでも射竦められれば、耐えがたい程の痺れが全身に走った。
そうしてより一層激しくなる腰の動き。淫らな水音が部屋に響く。私はただ、悦楽に支配されるだけだった。
「も、っイくっ、イ……っ!!」
「うん……オレもイくよ、なまえ……っ」
同時に絶頂へと駆け上がる。覆い被さったカカシの身体の震え、そして最奥に熱い飛沫が弾けたのを感じる。
ああ――私は、コイツに……。腕を縛っている紐が一層きつくなった気がする。ぼやけた視界で何事かを口にする男。その言葉の意味を問う前に、私は瞼を閉じ、気を失った。
――「愛してるよ、なまえ」
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