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放課後の教室。椅子に座ったみょうじさんの髪を梳かす。その手触りの良さに目を細めた。
席替えで彼女の後ろの席になって、「綺麗な髪だね」と話しかけられたのが親交の始まりだった。
話題は専らヘアケアについて。俺の髪も男の中じゃ長いほうだけど、女性のロングヘアともなれば手入れも大変そうで。お節介かとは思いながらも口を出して、それに感謝されて。
やがてヘアアレンジを頼まれるようになって、こうしてたまに髪を弄るようになった。
そこに下心は、……ないとは言い切れない。
「できた?」
「まだ。もうちょっと待って」
おくれ毛が出ないよう丁寧に、手早く纏める。ふわりと漂ういい香りは自分の使うシャンプーと同じもので、勧めたのをちゃんと使ってくれてるんだなと嬉しくなった。
近くの机に置いていたゴムを使い、耳の下で二つに結ぶ。位置を微調整すれば、もう完成だ。
「はい、出来たよ」
「ありがと。やっぱり上手いね、伊武くん」
「まぁ…妹たちの髪、いつも俺が結んでるから」
こんなところで役に立つとは思わなかったけれど。
いつもとはまた違った印象になったみょうじさんから目が離せなくなる。髪を下ろしているのもいいけれど、低めの位置でのツインテールはより可愛く見える。自分で自分の首を絞めているみたいだ。
手鏡でいろいろな角度から自分の姿を確認している彼女が、こちらの視線に気づいて照れたように笑って。それに胸が大きく高鳴った。
「どう? 似合ってる?」
「うん。……可愛いよ」
彼女が悪いわけじゃないのは百も承知だけど、俺ばかりが動揺しているのが何だか癪で。だから不意打ちで、普段言わないようなことまで口にした。
結果、その言葉は思ったより効果を発揮し、みょうじさんは真っ赤に頬を染めて見事に硬直。それに堪えきれず左腕を捕まえて引き寄せれば、さっきのシャンプーの匂いがもっと近くなった。
お題 … まよい庭火
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