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新月の守護スキンのオーメン
オーメンが比較的常識人ぽい?かも、つまりキャラ崩壊
鬱蒼と生い茂る木々の中、ぽつんと存在する湖。そこに見知った女がひとり。
防具を外し軽くなった身体で、散歩でもしてみようかと考えたのが運の尽きだ。
素通りしようとしたが、水面に仰向けで揺蕩っていた彼女の視線が痛くて、仕方なく声をかけた。
「何、してんだ」
「んー…夕涼み?」
「…もう夜だぞ」
とうに日は沈みきり、辺りを包むのは闇と静寂。水面に光の破片を散らす月明かりが、いやに眩かった。
脱力した四肢が浮き沈みを繰り返し、その度にちゃぷちゃぷと細波が立つ。
「オーメン、手貸して」
「あ? なんで俺が」
「水から上がれなくなっちゃってさ」
こちらに気安く手を差し出す女。その白くて細い指に眩暈を覚えた。戦場など知らないような、頼りない肉体に。
そうだ、この女は
「ほ、ら――っ!」
仕方なく差し出した腕を、勢いよく引かれる。突然のことに反応できず、俺はされるがままに…湖に落ちた。
水飛沫とは反対に沈む身体。幸い鎧を着けていなかったため、作用する浮力に従っていれば自然と水面に顔を出すことができた。
湖は意外と深く、底に足がつかない。…俺が金槌だったらどうするつもりだったんだこいつ。
「てめぇ、」
「ほら見てよ。空」
「あぁ?」
抗議するも流され、渋々女が指す空を見上げれば。
そこには――目映く輝く、まるで雲のような光の帯が夜空を横切っていて。きらきらと瞬いている星々に、目を奪われてしまった。
同時に、まだこれを綺麗だと思える心が自分に残っていたことにも驚く。そんなもの、とっくに捨てたと思っていたのに。
「今日、七夕なんだって」
「七夕ァ?」
鸚鵡返しに問えば、説明を返す彼女。俺と同じ新月の守護である疾風に教えられたらしい。
彼の出身地にまつわる言い伝えで、天の川を隔てて離れ離れにされた夫婦が、一日だけ会うことを許された日。それが今日なのだという。
どこにでもありそうな御伽噺だ。だけど、何故かくだらないと切り捨てられなかった。
「ね、オーメン…来年の夏も一緒に見れたらいいね」
自分で言っておいて、照れたように微笑む女。上気した頬が星明かりに照らされる様に、思わず息を呑んだ。
満天の星空も、彼女の笑顔も――俺には眩しすぎて。
返事の代わりに、手を重ねて握ってやった。離すまいと、強く…強く。
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