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「え、っ…なまえ、さん」
「ふふ」
笑ってみせれば戸惑って視線をあちらこちらに飛ばす彼。
風邪を引いた花京院くんのお見舞いに、という口実で家に上がり込み、自室にお邪魔したのが三十分ほど前。いきなりだったから嫌な顔の一つでもされるかと思っていたが、とても嬉しそうに出迎えてくれた。友達が見舞いに来るなんて初めて、らしい。親はどちらも仕事に出ていて、家に一人きりだったとのこと。
ここまで親しくなるのには本当に苦労した。愛想が悪いわけではないが、壁を作って人と接する彼だから。じっくりじっくり時間を掛けて距離を詰めた。だけど。
もう、我慢できない。
だってベッドに臥している彼が、こんなにも色っぽいから。そんじょそこらの女よりずっと綺麗な白い肌は熱により上気して。優婉ながら決してなよなよしくはない顔立ちから細身だと思われがちだが、パジャマの下に隠されたその体は程よく締まっている。セットされていないチェリーレッドの艶やかな髪はシーツの上に力なく散らばって。うすい藤色の目はいつもより力なくやわらかな光を湛えており。ああ、いつもは強くあろうとしている彼がこんなにも弱っている。しかもその姿を私の前に晒しているなんて!
舌なめずりをしそうになる。据え膳食わぬはなんとやら。理性は既に吹っ飛んでいた。
「ど、いてくれないか、その」
「やだって……言ったら?」
更に混乱したような表情の彼に、笑顔を貼り付けたままの私。
今、私は花京院くんの上に馬乗りになっている。少し体を起こした彼に、顔を思い切り近づければ、頬が赤く染まる。まるで花のようだ。こんなにも儚くて、美しい。
女と男、力の差は歴然。なのに私を跳ね除けないのは。彼の優しさゆえか、それとも。
「ねえ、抱いて?」
「な…っ」
囁けば益々顔を赤らめる花京院くん。その姿に口端を吊り上げた。
私を突き放そうかどうしようか迷っているように所存なさげな手を掴み、そっと撫でる。頬ずりして指先に唇を寄せて。ちゅ、ちゅ、とキスを落としてゆけば彼はようやく口を開く。
その身体は微かに震えていて、完全に緊張しきっているのが見て取れる。
花は儚くて美しい。
――だからこそ、散らせたくなる。
「そんな、女性が……はしたない」
「はしたないなら躾けてよ」
こぷ、と膣から愛液が溢れた音がした。
花京院くんが、喉を鳴らす音も。
台詞: 伽藍 様
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