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※オメガバースパロ
それは逢魔時のこと。足を縺れさせ息も絶え絶えに辿り着いたのは、今回の仕事用に充てがわれたホテルの一室。火照った身体を鎮めようと短く何度も息を吐くが、そんなことをしても何の慰めにもならない。
勢いのままドアノブに手をかけ、押すとすぐに扉は開く。ばたばたと部屋の中に駆け込み、一目散に自分の荷物を目指し、抑制剤を求めてキャリーバッグの中を漁る。
いきなり訪れた発情期。周期が不順である私には珍しくないが、まさか今来るとは思わなかった。仕事が終わった後だったのが不幸中の幸いか。
何故かいつも携帯している抑制剤が鞄の中に見当たらず、急いでホテルに戻る羽目にはなったけれど。まあ、何事もなく戻ってこれてよかっ――。
「お探しの物はこれですか?」
いるはずのない男の声に、勢いよく後ろを振り向く。そこには今回の仕事のパートナーであるバーボンが壁に凭れて立っていて。彼はこれ見よがしに、片手に持った私の抑制剤のケース二つを揺らす。私の鞄とキャリーバッグに入っていたはずの薬を。
「どうして…あなたが、それを」
「さて、何故でしょうね?」
いつも通りの軽薄な笑みに滲む別の色に思わず後退る。背筋を冷たい汗が伝った。だって彼は、きっと――。
「まさか貴女がオメガだったとは…。こんなにフェロモンを垂れ流して、よく襲われずに戻ってこられましたね」
「やめ、て…」
笑みを深めた彼が、一歩ずつこちらに近づいてくる。扉の閉められた部屋。発情期のオメガに迫りくるアルファ。逃げなければいけないのに、身体が動かない。さながら蛇に睨まれた蛙のように。アルファの前ではこんなにも無力だということを、身をもって思い知らされているようだ。
しかも私は彼とは犬猿の仲で、嫌味の応酬は日常茶飯事。この仕事が決まった時も大分揉めた。
それなのに――アルファのフェロモンにあてられた私は。今すぐ彼に服従し隷属して、犬のように腹をさらけ出したいという欲と必死で戦っていた。
「それにしてもいい匂いだ…」
ついに目の前までやってきたバーボン。彼の手が私の顎を掬う。そこから熱が広がっていくようで、思わず唾を呑んだ。
視線が交わる。目の前のアルファは、今まで見たことがないような獰猛な笑みを浮かべていて。ああ、今からこの男にたべられてしまうのだと。そう自覚した途端、子宮がきゅうと唸った。
「我慢しなくていいんですよ。楽しみましょう?」
蜂蜜を煮詰めたように甘い声で囁かれて。私は、アルファに目をつけられた哀れなオメガは――頷きを返してしまった。
▽
時間がわからないほどに交わって、めちゃくちゃに揺さぶられて。後ろから突かれている今も、ただ快楽の波に翻弄されて喘ぐことしかできない。
れろ、とバーボンの舌が首筋をなぞる。それだけで軽く達してしまって、身体を支えていられずベッドに突っ伏した。
「これだけでイったんですか?」
声はなんとか我慢したのに、お見通しだと彼に笑われた。
ああ、あのバーボンに番にされるかもしれないのに、それは死刑宣告のようなものなのに。どうしようもなく悦ぶ身体と脳はきっともう、オメガとしての本能に支配されてしまっている。
「っふ、あ…だめ、ぇ」
「駄目という顔ではないですよ、それは」
それでもなんとか拒否の言葉を紡げば、再び首筋に顔を埋められる。牙を突き立てる箇所を定めるように唇を這わせられ、断続的な法悦に襲われた。
「や、っ…ばーぼんの、めすになっちゃ、っあぁ!」
「…煽るのも大概にしてください、よっ!」
急に奥を抉られ、ひときわ高い声が出た。同時にもう何度目かもわからない絶頂を迎え、身体がびくびくと震える。
悦楽の残滓に浸っていれば、繋がったまま仰向けにさせられて。最初の体位…正常位になる。
「はぁ…そんなに嫌がるのなら仕方ありません。あなたから強請るまで、当分このままですね」
鼻が触れ合うほど近づいたバーボンが、その端正な顔を歪めて微笑む。熱に浮かされたように蕩けた瞳をほそめて。綺麗なはずのその表情が、私には悪魔の笑みにしか見えなかった。
白濁にまみれた接合部からは卑猥な水音が響き、それに合わせて私の腰も揺れる。甘い痺れが止まらない。
際限のない悦楽の渦に飲み込まれてしまいそうで、このまま犯され続けるのは怖い。自分が自分ではなくなってしまいそうで。だけど期待してしまう。もっとしてほしいと、せがみたくなってしまう。
私が彼に陥落するまで、あと――。
お題:月にユダ様
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