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「はい、これ!」
傀儡の手入れをしていれば、視界を遮るように差し出された物。それは綺麗に包装された箱で。
オレは眉を顰め、その得体の知れない箱を目の前の女に突き返した。
「何のつもりだ?」
どうせくだらないものに決まってる。取り入るつもりにしても、物で釣るなんて安直すぎんだろ。この馬鹿の考えそうなことだ。
この女、なまえが暁に入って数ヶ月。ガキ臭さの抜けねえ彼女とオレの術は、最悪なことに相性が良く、デイダラの次にツーマンセルを組まされることが多かった。
宿で休息中とはいえど、こいつは呑気なもんだ。仮にも任務だってのに。人の部屋にまで入ってきやがるし、図々しいったらありゃしねえ。冷たい目で睨みつけるが、なまえが意に介する様子はない。
いつもそうだ。どんなに邪険に扱っても、彼女がオレから離れることはなかった。
「お誕生日おめでとう、サソリ」
いきなり放たれた台詞に、息を呑んだ。
思わず壁に掛かっているカレンダーで確認すれば、今日は11月8日。確かに自分の誕生日だ。
祝われたのなんて数年ぶり…いや、数十年ぶりだ。誰かに教えた記憶もないが、どうしてこいつは知っていやがるんだ。昨今のビンゴブックはそんな情報まで載せるようになったのか。
現実逃避を始めた思考をよそに、薄く唇を開く。人間をやめた傀儡にそんなもの関係あるか、なんて皮肉は。
「ほら、受け取って!」
まるで自分のことのように喜んでいるなまえの笑顔に気圧され、消えてしまった。
そのアホ面を見れば、この馬鹿が本心からそう言っていることがわかる。人間でもないオレの誕生日なんざ祝って何が楽しいのか。
いつものように、そう嘲笑うことができない。
「ああ、……」
気管代わりの管に詰まった息をなんとか吐き出す。どう返答したものか迷い、結局何も言えなかった。
胸に何かが刺さって抜けない。まるで痛みを感じているかのように。そんなはずはない。傷がつき血が流れるような肉体など、もうとっくに捨てている。
――クソ、なんてことだ。自分はこの馬鹿に随分と絆されてしまったらしい。
無いはずの心臓が鼓動を早めているようで。苦しさを感じているだなんて。
自嘲気味に口端を歪めれど、受け取った重い箱を手離すことはできそうになかった。
サソリ誕記念だったもの
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