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「なまえ、お主…忍でもないのに如何してわしを庇った」
「…あら」
緩慢な動作で左衛門様を見やる。その顰められた眉に、首を傾げる様に揺らした。
もしかして、とこんな状況なのに胸が締め付けられる。少しだけ。期待してしまう。
こんな姿になってしまった、今でも。
「わた、しのことも、しんぱい…してくださる、んですね」
ひゅう、と。喉から息が抜ける。左衛門様の目が見開かれた。
伊賀の忍に貫かれた腹から噴き出るのは、私の肢体とそれを抱える貴方の腕を濡らすのは。赤く赤く、二人を染め上げるそれは。
生命の灯火は消えかかって居るのに、何故か苦しみは無い。左衛門様の温もりを、感じているからだろうか。
「あ、なた…の、」
「もう良い、喋るな」
鮮明であった彼のお姿から色が抜け落ちてゆく。
ああ、いやだ。もっと貴方をこの眼に映して居たいのに。
お胡夷様。身の程知らずでは御座いますが、私は貴女が羨ましかった。左衛門様の兄妹であらせられる貴女が、何のしがらみもなく左衛門様と共に居られる貴女が。
使用人の分際で希う事では無いとは、解っているけれど。
ゆっくりと開いた唇が震える。
「あなたのこと、を」
お慕い申しておりました、と。何とかそこまでは吐き出せたけれど。
秘めていた想いは、終ぞ言葉になる事は無く。
糸が切れた様に力が抜け、私の視界は瞬く間に暗転した――。
君がため惜しからざりし命さへ
長くもがなと思ひぬるかな
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