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※ 一応大学生パロですが、あんまり要素ありません
紅が滲む。薄い涙の膜。
有人が意外に涙脆いのを忘れていた。
ベッドに座っている有人。その向かいには私。
早朝四時の部屋を無機質に照らす蛍光灯が目に痛い。
私が動くたびに震える身体は強張っている。
「泣かないで、嘘だよ」って言えたらどんなに楽だろう。
だけど口には出せない。出さない。
「別れよ、有人」
もう一度呟く。またびくりと反応する彼。
見開いた目からほろりと溢れた涙を無表情で見下ろす。
その唇が震えて、紡ぐのは疑問。
「ど、うして」
不思議で仕方ないんだろう。だって昨日まではあんなに順調だったから。
いつも通り大学に行って、授業が被る時やお昼の休憩時間は一緒にいて、家に帰ったらご飯を食べて、お風呂に入って、このベッドで寝て。
有人の手が関節が白くなるほど握られる。
「どうしても。別れてほしくて」
「…いやだ」
歪んだ。顔をした。有人が。
私の手首を掴む。ぎりぎりと音を立てるようなその力の強さに、きつく眉を寄せた。
「やめて、…有人、やだ」
「なら別れるなんて言うな」
有無を言わせず勢いよくベッドに倒され、一瞬息ができなくなる。
馬乗りになった有人。もう、抵抗する術は、ない。
「有人!」
「好きだ。…なまえ、愛してる」
シーツに沈む。私の勇気も、悲しみも、涙も、その全てが。
明日になれば全部やり直しだ。別れ話はなかったことにされて、いつも通りの日常が始まる。
鬼道有人がそんな人間だなんて誰も思っていないだろう。別れ話の途中でうやむやにする男だなんて。
そうさせたのは他でもない私。つまらない優越感に浸ってしまう自分が嫌になる。
口付けの合間。自嘲気味に、すこし笑った。
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