【成×尚】
中学生の成臣は、聖護院財閥の子息であるからという理由で身代金目的で誘拐されてしまう
犯人に工場跡のような廃墟に連れてこられ、拘束される成臣
しばらくして犯人が仲間との連絡か何かでその場を離れる
すると入れ替わるように、見知らぬ少年が走って入ってくる
(数年前の尚輝)
「あれっ、先客いたんか。まあいいや。ちょっと邪魔するなー」
まるで公園のベンチに先に座られていたかのような物言いで、平然と成臣の隣に座る尚輝
口をガムテープで塞がれている成臣は何も言葉を発せずただ呆気に取られる
尚輝は手に持ってきていたレジ袋をまさぐり、コンビニの惣菜パンをいくつか取り出し食べだす
何故自分の状態について何も聞かないのか、何故隣でパンを食べているのか、その他諸々の疑問とコンビニパンを初めて直に目にした物珍しさで、尚輝をじっと見つめる成臣
すると尚輝が視線に気づく
「腹減ってんの?お前も食う?」と言い
成臣の返事も待たずにガムテープを剥がし、持っていた焼きそばパンを成臣の口につっこむ
訳も分からないままとにかくつっこまれたものを咀嚼し飲み込む
「……お前、なんか巻き込まれてんの?まー、だからって俺に助けを求めてもらっても困るんだけど」
尚輝がまたもや世間話のような調子で聞いてくる
その言葉に一瞬視線を落としたあと、成臣が答えはじめる
「大丈夫です、助けならすぐ来ますから」
「ふぅん?」
「……僕の父さんはきっと、表沙汰になるのを怖がってる。だからすぐに身代金が渡されて、助けが来ます」
つぶやくような小声で続ける
「僕は僕だから助けられるんじゃない。僕が聖護院の子供だから助けられるんだ」
「……」
パンの最後の一かけらを口に放り込み、黙って聞いている尚輝
「すみません、こんなこと会ったばかりの貴方に話しても、分からないですよね」
「うーんたしかによく分かんねーわ」
「あはは……」
「でも、お前みたいに巻き込まれてそんなに落ち着いてる奴、初めて見た。お前肝据わってんなぁ。"こっち"のほうが向いてるかもな。はは」
すっくと立ち上がる尚輝
「じゃっ、飯も食ったし俺行くわ。じゃーなー」
来た時と同じように、急ぐように走って去っていく尚輝
数年後
高校生になった成臣が運転手付きの車に乗り家に帰る途中、街並みの中に、尚輝が食べていたパンの袋についていたマークと同じ看板のコンビニを見つける
急いで車をその前に停めてもらい、店に入る
パンコーナーを見つけ棚を探すと、あの時と同じ焼きそばパンが並んでいる
それを買おうと手を伸ばすが、すんでのところでためらってしまう
「(……もしもこれをもう一度食べて、あの時より美味しくなかったら……)」
「(あの時感じた気持ちは、……彼への思いは、ただの気の迷いになってしまうんだろうか)」
「("若気の至り""よくある子どもの憧れ"……そんな、そんなものに……)」
少しして車に戻ってくる成臣
何をお買いになったんですか坊ちゃん、と聞く運転手に板ガムを手渡し、
いつもありがとうございます、これじゃ全然足りませんけどお礼です、と微笑む
そして再び発進した車の後部ガラス越しに、遠ざかっていくコンビニを苦い顔で見送る成臣
犯人に工場跡のような廃墟に連れてこられ、拘束される成臣
しばらくして犯人が仲間との連絡か何かでその場を離れる
すると入れ替わるように、見知らぬ少年が走って入ってくる
(数年前の尚輝)
「あれっ、先客いたんか。まあいいや。ちょっと邪魔するなー」
まるで公園のベンチに先に座られていたかのような物言いで、平然と成臣の隣に座る尚輝
口をガムテープで塞がれている成臣は何も言葉を発せずただ呆気に取られる
尚輝は手に持ってきていたレジ袋をまさぐり、コンビニの惣菜パンをいくつか取り出し食べだす
何故自分の状態について何も聞かないのか、何故隣でパンを食べているのか、その他諸々の疑問とコンビニパンを初めて直に目にした物珍しさで、尚輝をじっと見つめる成臣
すると尚輝が視線に気づく
「腹減ってんの?お前も食う?」と言い
成臣の返事も待たずにガムテープを剥がし、持っていた焼きそばパンを成臣の口につっこむ
訳も分からないままとにかくつっこまれたものを咀嚼し飲み込む
「……お前、なんか巻き込まれてんの?まー、だからって俺に助けを求めてもらっても困るんだけど」
尚輝がまたもや世間話のような調子で聞いてくる
その言葉に一瞬視線を落としたあと、成臣が答えはじめる
「大丈夫です、助けならすぐ来ますから」
「ふぅん?」
「……僕の父さんはきっと、表沙汰になるのを怖がってる。だからすぐに身代金が渡されて、助けが来ます」
つぶやくような小声で続ける
「僕は僕だから助けられるんじゃない。僕が聖護院の子供だから助けられるんだ」
「……」
パンの最後の一かけらを口に放り込み、黙って聞いている尚輝
「すみません、こんなこと会ったばかりの貴方に話しても、分からないですよね」
「うーんたしかによく分かんねーわ」
「あはは……」
「でも、お前みたいに巻き込まれてそんなに落ち着いてる奴、初めて見た。お前肝据わってんなぁ。"こっち"のほうが向いてるかもな。はは」
すっくと立ち上がる尚輝
「じゃっ、飯も食ったし俺行くわ。じゃーなー」
来た時と同じように、急ぐように走って去っていく尚輝
数年後
高校生になった成臣が運転手付きの車に乗り家に帰る途中、街並みの中に、尚輝が食べていたパンの袋についていたマークと同じ看板のコンビニを見つける
急いで車をその前に停めてもらい、店に入る
パンコーナーを見つけ棚を探すと、あの時と同じ焼きそばパンが並んでいる
それを買おうと手を伸ばすが、すんでのところでためらってしまう
「(……もしもこれをもう一度食べて、あの時より美味しくなかったら……)」
「(あの時感じた気持ちは、……彼への思いは、ただの気の迷いになってしまうんだろうか)」
「("若気の至り""よくある子どもの憧れ"……そんな、そんなものに……)」
少しして車に戻ってくる成臣
何をお買いになったんですか坊ちゃん、と聞く運転手に板ガムを手渡し、
いつもありがとうございます、これじゃ全然足りませんけどお礼です、と微笑む
そして再び発進した車の後部ガラス越しに、遠ざかっていくコンビニを苦い顔で見送る成臣
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