このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

本編

8月2日 土曜日 昼

 1人の客が相談所を訪れた。名前を三合一恵みあいいちえ彼女の依頼内容はこうだった。
「今夜、羽生蛇村はにゅうだむらで生贄の儀式があるから見に行きたい」という内容。
素人が面白半分で行く所ではないと思ったが、最近評判の良いと噂の霊幻先生ならと思い俺のところに相談に来たという事らしい。正しい判断です。
その羽生舵村は調味市からそう離れているわけでもなく、まあ何も起こらないだろうと考え依頼を受ける事にした。決して暇だからなどではない。

 生贄という言葉に嫌悪感はあるが久々の大きな仕事になると俺の感が言っている。
「その依頼この霊幻新隆が引き受けた!ところで三合さん、俺には弟子が居るのですが同行させても良いでしょうか?」
モブは学校は夏休み部活も昼までだと聞いている、まあ1人でも平気そうな依頼ではあるが念には念を入れて俺は依頼人に問いかけた。
「まぁ!有名な先生にもなるとお弟子さんがいらっしゃるのですね!私は全然大丈夫ですよ」依頼人から良い返事も貰えたので、モブに電話をかける事にした。
「あ、モブか? 今夜大丈夫か?泊まりがけの依頼になりそうなんだがどうだ?いや、俺1人でも楽勝なんだが久々に大きな依頼だし何ならと思ってお前に電話したんだ。俺1人でもぜっんぜん大丈夫なんだがな。」
「明日は部活がないので大丈夫だとは思います。母に聞いてからもう一度師匠に連絡します。」
モブはそう言うと電話を切った。返事を待つ間に依頼人と打ち合わせをする事にした。

 出発は儀式が23時だから21時ごろを予定している。依頼人は儀式自体に興味があると言うよりも、儀式が行われる事に興味があるようなので、少し見たら帰ることを約束してもらった。何より夜も遅いしモブも中学生だからな。
次に羽生蛇村までは一度行ったことがあると言う依頼人の車で向かう事になった。結構な山道の為それなりの車で行かないといけないらしい。まぁ、俺としては助かるので是非お願いしたいところだ。
話し合いをしているとモブからOKの返事が来た。俺は、20時に事務所集合を伝え電話を切った。

 残りの話し合いで決まった事は、儀式が行われていた場合こっそりと見る事、何かあったとき用食料なども持っていく事だった。
見学に関しては生贄の儀式なんて行う奴らは信仰や掟にうるさい堂々と見せて欲しいなんて交渉したら何されるかわかったもんじゃ無いからだ。
食料は深夜の森の中だ何があるか分からないからな一応だ一応。
一通り話し合いも済んだのでここで解散となった。準備しないといけないこともあるしな。俺はスーツを脱いで腕をまくり額に流れる汗を拭いた。

 いろいろ準備をしていたら20時になっていた。
「師匠来ましたよ。途中で巻こうと思ったのですがエクボもついて来ちゃいました。」
時間になりモブとオマケで緑の悪霊エクボが相談所に来た。
「つれねえ事言うなよシゲオ、泊まりがけだなんて楽しそうな事に俺を置いて行くなんてさ」まぁ、いてもいなくても特に変わらないだろう。
モブとエクボに今回の依頼内容を話した。案の定あまりいい顔はしなかった。エクボに至っては「これまた奇妙な依頼を受けてきたな」とまで言ってくる。何も起きなきゃただの警護ですむんだから大丈夫だろ。

 21時も近くなった頃、依頼人の三合さんがやって来てモブを見て驚いた顔をした。
「ずいぶんお若いお弟子さんなんですね」まぁ中学生が弟子って結構怪しいよな。
「モブは若くはありますが、俺の優秀な弟子です。そうじゃなくてもこの霊幻新隆が着いておりますのでご安心ください」
俺の言葉に少し、安心したのをみて少し遅くなったが荷物を積み込み出発する事にした。

 21時半と遅れたが、相談所を出発し調味市を出てから体感で2時間ほど山道を走り続けた頃、静かだった車内に一つの声が響いた。
「あれ?もうついててもおかしくないのですが…道を間違えたかな」ボソッと恐ろしい事を言ったが俺の耳にはきちんと届いている。
モブもガタガタした山道が続いた事で車酔いによりダウンしている。俺も尻が痛くなってきた。

 「大丈夫ですか?そろそろその儀式の時間になりそうなんですが」依頼人は少し焦っているようだった。これ以上夜の森の中を進むのは危ないだろう。
依頼人には残念だが諦めてもらって帰宅する様に言い聞かせようとしたが
「あと15分だけで良いんです進ませてください」かなり必死だったがこっちもモブを預かっている以上森で彷徨って帰れないなんて事はかなり困る。
「雨も降って来た上に道に迷ったのでは帰るのにも一苦労します。幸いここまで真っ直ぐ進んできたのでまだ引き返せます。これは私達だけでなくあなたの為でもあるのです」俺も必死さをアピールして依頼人に訴えた。
「もう少し、もう少しだけなら大丈夫ですってここまで真っ直ぐでしたし…」
だが依頼人も引き下がらない為奥の手を使うかと考えた瞬間

 ゥウウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーー
耳をつんざくようなサイレンの音と共に大きな地震が起こった。
しばらく揺れが続いた後異変が訪れるのは早かった。まず分かりやすい所から言うと雨だ。赤い雨が降っている。そしてどこからともなく人のような呻き声が聞こえたと同時くらいに銃声が一発と青年の叫び声。

 「何これ、何?」依頼人も怯えているここは急いで戻ってもらわねばそう思っていると車の後方から人のような否、目から血を流した人だったと言える人物がクワを持って襲ってきた。
「嫌ぁぁぁ!!」車は急発進しぐんぐん前へ進んでいく。依頼人はパニックになっているようだった。
「三合さん落ち着いてくださいっこれ以上って、前!前、崖!!」言い終わるか終わらないかしない内に車は崖からドシンッという大きな音をたて開けた所に落ちた。

1/1ページ
    すき