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乱文

刀剣男士は夢を見るのか。
以前「電気羊は夢を見るのか」なんて言葉があったが、答えはイエスだ。
眠るときに見る夢も、希望という夢も、どちらも見る。
モノなのに、と鼻で笑う人間もいたのだが、モノだからこそだろう。想いを馳せて形作られたのが彼らだ。そうでなくては、彼らは私たちの声に応えてくれなかった。


「陸奥守には夢はある?」

ある日なんとなく初期刀に尋ねてみた。質問の意味をゆっくりと飲み込んだ彼はうーんと腕を組んで唸っている。難しいことを聞いてしまっただろうか。
難しいようなら無理には、と口に出そうとしたところで「そうじゃのぅ」と呟かれる。

「恐らくじゃけど、陸奥守吉行っちゅう刀剣男士には共通の夢がある。ワシもそれを持っちょる。それを答えるのは簡単じゃけど……主が聞きたいのはそうじゃないじゃろ?」

共通の夢とは別の夢。
それは、この本丸に顕現した陸奥守吉行が、考えている夢。全より零れた一。私だけの特別さを感じて少し嬉しくなった。
が、すぐに共通ではない夢を持っていなくて答えられないのでは、と思い至り血の気が引いた。

「それは、そうなんだけど……」
「じゃあ簡単やき」

こちらの不安を吹き飛ばすようにニカっと笑った。

「ワシの夢は、この本丸が長く続くこと。もちろん、戦いが終わるまでの間だけでいい」
「この本丸が、長く」
「ワシらは戦をしちょる。長引くということは好転していないことだから、望んじゃならんけど」

だめかの? と困ったように笑うのを見て「ダメだよ」なんて言えるはずもなく。
この本丸の陸奥守は、この本丸のことを思い、夢を見てくれている。
優しい、私の初期刀。

「そうだね、出来るだけ長くこの本丸で過ごしていきたいね」

いつ戦が終わるかわからない。終わる前に倒れてしまうかもしれない。
でも出来る限り、一緒に歩んで行けたらいい。

「これからもよろしくね、陸奥守」
「任せちょけ!」
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