乱文
『下記の刀種は夜間部屋から出ることを禁ず』
掲示板に貼られた文言を見つけ水心子は首を傾げた。記載されている刀種は太刀・槍・大太刀・薙刀。どれも夜戦には不向きなものばかりだが本丸内での行動が制限されるのはどういうことだろうか。
貼り紙には『※部屋から出なくてはならないときは短刀や脇差と共に行動すること』ともある。こちらは夜戦に強い刀種だ。この本丸は夜戦の戦場にでもなり得るのか。そんな報告は聞いたことはない。
掲示板の前で立ち止まったままの水心子に案内役の歌仙が「あぁ」と気づいた。
「本丸内の案内をする前にこれを伝えておかないといけなかったね」
「これ、とは?」
「この本丸は夜になると主の夢の中に沈むんだ。夢と現が混ざりあう」
歌仙の説明にますます疑問符が飛ぶ。夢の中に沈むとは。なにかの比喩なのかと考えるものの思いつかない。
「言葉通りの意味さ。打刀であれば夜間の移動は問題ないけれど、初めてだから短刀や脇差の誰かに声をかけて今夜散策するといい」
好奇心には勝てず、脇差の1振り、鯰尾藤四郎に同行を頼んだ。ふたつ返事で了承してくれた。
夕食を終えしんしんと夜が深まった頃、部屋に鯰尾が迎えにきた。
掲示板に貼られた文言を見つけ水心子は首を傾げた。記載されている刀種は太刀・槍・大太刀・薙刀。どれも夜戦には不向きなものばかりだが本丸内での行動が制限されるのはどういうことだろうか。
貼り紙には『※部屋から出なくてはならないときは短刀や脇差と共に行動すること』ともある。こちらは夜戦に強い刀種だ。この本丸は夜戦の戦場にでもなり得るのか。そんな報告は聞いたことはない。
掲示板の前で立ち止まったままの水心子に案内役の歌仙が「あぁ」と気づいた。
「本丸内の案内をする前にこれを伝えておかないといけなかったね」
「これ、とは?」
「この本丸は夜になると主の夢の中に沈むんだ。夢と現が混ざりあう」
歌仙の説明にますます疑問符が飛ぶ。夢の中に沈むとは。なにかの比喩なのかと考えるものの思いつかない。
「言葉通りの意味さ。打刀であれば夜間の移動は問題ないけれど、初めてだから短刀や脇差の誰かに声をかけて今夜散策するといい」
好奇心には勝てず、脇差の1振り、鯰尾藤四郎に同行を頼んだ。ふたつ返事で了承してくれた。
夕食を終えしんしんと夜が深まった頃、部屋に鯰尾が迎えにきた。
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