その他
台所からは幸せな音楽と共にとてもいい香りが漂ってきた。よく知っている、けれど少し違う匂いに釣られてついつい足が向かう。
「匂いに釣られてきたか」
それらの中心にいるその人は台所を覗いているこちらに気づいて微笑んだ。
「カレー、ですか?」
図星を隠すように問いかける。
「おう、明日の分な。今日はこれから潜書が控えてるから仕上げるのそのあとになる」
「このままでも十分美味しそうです」
「まあ俺が作ったから旨い自信はある。が、戻ったらこれに隠し味を入れるからそれまで我慢してくれよ?」
今まで作ってくれたものが不味かったことなどない。隠し味とは一体なんのなのか、気になるところではあるけれど、楽しそうな姿に聞く気にはならなかった。
だから知らない。これに何を加えたら完成するのか。一口掬い、口に含む。美味しいけれど物足りない。
あなたがいなければ、このカレーは完成しない。
なのに。どうして。
「まだ帰ってこないんですか…」
知っている。
もうここには戻ってこないことを。
わかっている。
このカレーは未完成のままだというのことを。
「匂いに釣られてきたか」
それらの中心にいるその人は台所を覗いているこちらに気づいて微笑んだ。
「カレー、ですか?」
図星を隠すように問いかける。
「おう、明日の分な。今日はこれから潜書が控えてるから仕上げるのそのあとになる」
「このままでも十分美味しそうです」
「まあ俺が作ったから旨い自信はある。が、戻ったらこれに隠し味を入れるからそれまで我慢してくれよ?」
今まで作ってくれたものが不味かったことなどない。隠し味とは一体なんのなのか、気になるところではあるけれど、楽しそうな姿に聞く気にはならなかった。
だから知らない。これに何を加えたら完成するのか。一口掬い、口に含む。美味しいけれど物足りない。
あなたがいなければ、このカレーは完成しない。
なのに。どうして。
「まだ帰ってこないんですか…」
知っている。
もうここには戻ってこないことを。
わかっている。
このカレーは未完成のままだというのことを。