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その他

自分の著作だという作品へ潜る。正直、これを本当に自分が書いたのか、と疑問に思う程度に自覚はなく、ただただ知識として頭の片隅にある。侵された本を手に取り中身を見てもところどころ文字は溶け、黒い塊がいくつも出来て内容を知ることはない。それを守るために、そして知るためにも、ここに潜らなくてはならない。

本の世界に沈むとき、その世界は文字と紙の色で。いつもその2色しかないと寂しくも悲しい感情が胸を占めた。

だけど今は違う。遠ざかる黄色い空。落ちてく軌跡のように靡く色とりどりの文字たち。こんなにも鮮やかで、暴力的なものは初めてで。自然と溢れた涙も空へと還る。

ーーあぁ、これは、まさしく自分の感情だ。

本の底へ足をつき、得物を強く握りしめた。
これは作品を取り戻すだけではない。僅かに甦った作品への想いは侵食者への怒りへと変わった。
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