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【未完】初期刀:山姥切

「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気に……な、ると…」

俺が顕現したのは本丸の運営がだいぶ落ち着いた頃だった。はらはらと涙をこぼす審神者と、近侍である山姥切長義に出迎えられたのは今でもはっきりと覚えている。
まさか本科がいるなんて。顕現したてではあるがサッと血の気が引いた。本能なのか咄嗟に(逃げなければ!)と衝動にかられたもののどうにも足が動かない。まだ体の動かし方をうまく理解できていないようだ。
山姥切長義は僅かに瞠目したあと、すぐにスッと目を細めた。その目がなにやら怖くて、布で視界を覆う。

「ようこそ、国広の。歓迎するよ」

優しい口調でそう声をかけられて思わず本科の顔を見た。穏やかな笑みを浮かべてこちらに握手を求めている。素直にこの手を取っていいのか。しかし拒否するわけにもいかない。恐る恐る本科の手を握り返すと少しだけ緊張がほぐれた。



本丸の案内を一通り終え、最後に自室を紹介された。本来ならばしばらくは近侍と一緒に寝食を共にするのだが、今回は都合が悪いため予定を前倒しして同じ堀川派のふたりがいる部屋になることを告げられた。都合というは俺が写しだからか、と聞いてみたが「いや、こっちの都合だよ」と本科は苦笑した。

「さっきは、その、すまなかった」

案内を終え審神者の元へと戻ろうとする本科の布を思わず掴んだ。それに応えるように本科も足を止め、体半分だけ振り返る。

「それはなんの謝罪かな?」
「顕現した直後、あんたに失礼な態度をとったことだ……写しとはいえ、さすがにあれは悪い、と思う」
「写しは関係ないと思うけど。……山姥切国広は本能的に俺を、山姥切長義に対して苦手意識があるらしいからね。顕現した直後なら仕方ないことだ」
「だが」
「国広の」

強めに呼ばれ思わず掴んだ布を手離してしまった。

「俺はお前がこの本丸に来てくれたのが素直に嬉しい。馴染めるよう、こちらも出来る限りのサポートするから、わからないことがあったら俺でも堀川派にでも聞いてくれて」

それじゃあ、と今度は引き止めるのを許さないように本科は足早に去って行った。
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