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宝石なまんばくん

「くっ……!」

敵の矢が左目に突き刺さり山姥切長義は思わず膝をついた。不意打ちだったとはいえ、捌ききれなかった不甲斐なさと痛みによる苛立ちから乱暴に矢を引き抜いた。どこかの猛将のようだ、と胸中でぼやきながら他に負傷していないか確認する。左目以外は無傷のようで、ますます苛立ちが募る。
左目を潰され死角が増えたものの問題はなさそうだ。膝をついた状態で抜刀、矢が飛んで来た方へ向けて地を蹴った。

「山姥切」

敵を一掃し終えた頃合いを見て山姥切長義の元に山姥切国広が駆け寄ってきた。

「左目を潰されただけだ。他は問題ない、まだ戦える」

頬を伝う血を拭い、無様な傷口は前髪で隠していたが、やはり見られたくはなくて僅かに顔を背ける。
その言葉に対し山姥切国広の返事はない。その代わりパキパキ、と割れる音が鳴り始めぱっと山姥切長義は振り返った。と、同時に前髪で隠した傷口に新たな痛みが走る。

「……っ、おまえっ」

何かを押し付けられた感覚があり、山姥切国広の手が離れた左目を抑える。痛みの中にある違和感からなにかされたのは明白。

「違和感があるかもしれないが、ないよりはましだと思う」
「は?」

顔を上げれば左目がぽっかりときらきらした穴が空いた顔があった。自分の目玉をくり抜き義眼代わりにと押しつけたようだ、と理解はしたものの思考はうまく走らない。そしてその顔を欠けた視界ではなく、しっかりと見えることに気づき「は?」と再び声をもらした。

「視界戻っている、だと?」
「本科だから霊力が合ったんだろう。帰還するまでこれで我慢してくれ」
「おい偽物くん、これだとお前が見えないだろうが」
「問題ない」

行くぞ、歩き出した山姥切国広の背に舌打ちするとその左側へと山姥切長義は駆け寄った。

「自分の体が無機物だから粗末にするな、と先日怒られたばかりではなかったかな?」
「? 粗末にはしてないが?」
「これは主だけではなく堀川国広や山伏国広にも叱ってもらう必要があるな」
「ま、待て、どうして兄弟の名前が出てくるっ」
「俺と主の説教に耳を貸さないからだが?」
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