このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

【未完】初期刀:山姥切

あくびをひとつ、かみころす。
外がゆっくりと明るくなってきていることに気づき固くなった体を伸ばした。
モニターの画面は相変わらず不規則に数値変動を示している。致命的なものはないがそれでも油断が出来ない。危険域の数値が回復したのを見て、息をついた。これを何度も繰り返している。短時間でも随分と疲れるというのに、これをずっと初期刀がやっていたのか。まったく、恐れ入る。
ストレッチついでに肩を回していると、廊下を駆ける音が聞こえてきた。その音は小さく、普段であれば気づかない程度だが、早朝の静けさが僅かに空気を震わす。
兄弟が早起きでもしたのか。
襖を開けて廊下を覗き見ると、いつぞや追いかけられなかった青い背中が見えた。

「三日月宗近!」

滅多に本丸内を走ることのない相手の名前を思わず呼んだ。
呼ばれた三日月宗近は立ち止まり、こちらを振り返った。
どうしてこんな時間に。なにをそんなに急いでいるんだ。問いかけたいことはあったが、三日月宗近はいつものように微笑んで。

「すまんな、野暮用だ」

とだけ言い残し、ぱたぱたと駆けていった。
心なしか声に余裕がなかったような気がするが、今の状態では追いかけるに追いかけられない。先日からの挙動が理解出来ない。いったいなにがしたいのか、眉を潜めながら執務室へと戻った。
兄弟か誰かが執務室へ来たら交代してもらい、初期刀を起こしに行ってやろう。そのまま休んでもらいたいが、さすがに怒られてさらに無理をしてしまう可能性がある。同じ山姥切国広だからこそ、難儀な性格も理解出来てしまう。遠い存在のように感じていたのに、こういうところで親しみを得てしまうことに苦笑がこぼれる。
もうひとがんばり、といったところか。
モニターの前に座り直したときだった。
数値の変動を映していた画面が一斉に【警告】という文字を表示したかと思えば、画面が真っ赤に染まる。

「な、なんだ?!」

戸惑っているうちに今度は前回聞いたものとは違う警報音が鳴り響く。

「こんのすけ!」

執務室の一角にある布団で仮眠をとっていたこんのすけが飛び起きる。

「本丸へ急接近する敵を捕捉!」
「なに?」
「敵襲です!!」

こんのすけの言葉を理解出来なかった。
敵襲? この本丸に? 結界はところどころほつれてはいたものの機能はしていたはずだ。モニタリングの時に異常は見られなかった。それともなにか、見落としが……?

「第一部隊は迎撃を! 第二部隊以下は本丸の防御を!」

自分の落ち度を今探している場合ではない。
こんのすけの指示に我に返り、すぐさま部隊編成と行うべく初期刀の元へと向かった。
25/25ページ