【未完】初期刀:山姥切
仮眠しろ、と部屋から追い出されたもののこの時間から朝餉の時間までというのは普通に睡眠である。寝ろと言ったところで自分が言うことを聞かないことを理解されつつあることに苦笑してしまった。
正直、ずっとモニターを見続け緊張状態にあったことでかなり疲労はたまっている。恐らく自室に戻り次第すぐに眠りにつけるだろう。
ふらふらと廊下を歩いていると誰かがこちらに向かって歩いてきているのに気づいた。それが三日月宗近だと認める自然と眉間に皺が寄った。この時間、いつもであればとっくに寝ている時間。それに、先日わざわざ近侍を通しての伝言。
「おぉ、ずいぶんとお疲れのようだな」
立ち止まり。わざとらしい明るい声で話しかけてきた。
「……何をしようとしている」
不機嫌を隠さず問いかける。
「ああ、茶をいただこうと思ってな」
こんな時間に? という疑問よりもその態度が癪に障る。
「……三日月」
諫めるように名を呼ぶと、ようやく目が合った。
「お前も、月の正体を見に来たのか」
「……はぐらかすな。今日は、逃がさないぞ」
「そうか、付き合ってくれるか」
「は?」
にこりと笑うと三日月宗近はこちらの手を掴み歩き出した。
連れて来られたのは食堂。料理担当の式神になにやら注文している。
「まあ、座れ」
所在なく立っていると小さな盆を持った三日月宗近に促され、そのまま食堂の隅の方に座った。
式神たちの動く音が僅かに聞こえてくる程度に、今の食堂は静かであった。この時間帯でも夜戦帰りの部隊や三日月宗近のように夜食を求めてやってくるものもいる。
盆の上にある湯呑に茶を注ぎ、カタンと目の前に置かれた。
「……」
三日月宗近も自分の分も用意し、少し息を吹きかけて冷ましてから一口。
「……同じよ。ただ、守りたいだけだ」
少し間を置いてから先ほど問いかけた答えが返って来た。
何を? それは決まっている。
「歴史を守る。それが刀剣男士の使命だからな」
「そうだな。心強いぞ」
「……馬鹿にしているのか?」
嬉しそうに目を細めて笑うその顔は、まるで幼子へ向けるもののようで。
「……ふむ。ははは、すまんな。こども扱いが過ぎたか」
ムっとして言えば今度は声に出して笑われてしまった。
こちらがどう反論したところで笑って流されるのが目に見えている。苛立ちを諦めるように深く息を吐いて茶を一口飲んだ。
「……だが、少し当たっている」
じんわりと口の中に温かさが広がる。
平安生まれの刀から見れば自分などまだまだこどものようなもの。
「見上げた先には、いつも……月があったからな」
初期刀としてこの本丸に古くからいても在り方も、強さも、この目の前にいる月に敵うとは思えない。届かないとわかっていても手を伸ばし続けているような、そんな憧憬を抱いていたこともバレているのかもしれない。
「それが、俺の見てきた景色だ」
「そうか」
先ほどとは違う笑みを浮かべ三日月宗近は頷いた。
「ところで、これはなんの茶だ? 緑茶かと思ったが味が違う」
「あぁ、これはだな。寝る前に飲むのにいいものを、と頼んだら出てきたのだ」
「ふっ……あんたらしい」
正直、ずっとモニターを見続け緊張状態にあったことでかなり疲労はたまっている。恐らく自室に戻り次第すぐに眠りにつけるだろう。
ふらふらと廊下を歩いていると誰かがこちらに向かって歩いてきているのに気づいた。それが三日月宗近だと認める自然と眉間に皺が寄った。この時間、いつもであればとっくに寝ている時間。それに、先日わざわざ近侍を通しての伝言。
「おぉ、ずいぶんとお疲れのようだな」
立ち止まり。わざとらしい明るい声で話しかけてきた。
「……何をしようとしている」
不機嫌を隠さず問いかける。
「ああ、茶をいただこうと思ってな」
こんな時間に? という疑問よりもその態度が癪に障る。
「……三日月」
諫めるように名を呼ぶと、ようやく目が合った。
「お前も、月の正体を見に来たのか」
「……はぐらかすな。今日は、逃がさないぞ」
「そうか、付き合ってくれるか」
「は?」
にこりと笑うと三日月宗近はこちらの手を掴み歩き出した。
連れて来られたのは食堂。料理担当の式神になにやら注文している。
「まあ、座れ」
所在なく立っていると小さな盆を持った三日月宗近に促され、そのまま食堂の隅の方に座った。
式神たちの動く音が僅かに聞こえてくる程度に、今の食堂は静かであった。この時間帯でも夜戦帰りの部隊や三日月宗近のように夜食を求めてやってくるものもいる。
盆の上にある湯呑に茶を注ぎ、カタンと目の前に置かれた。
「……」
三日月宗近も自分の分も用意し、少し息を吹きかけて冷ましてから一口。
「……同じよ。ただ、守りたいだけだ」
少し間を置いてから先ほど問いかけた答えが返って来た。
何を? それは決まっている。
「歴史を守る。それが刀剣男士の使命だからな」
「そうだな。心強いぞ」
「……馬鹿にしているのか?」
嬉しそうに目を細めて笑うその顔は、まるで幼子へ向けるもののようで。
「……ふむ。ははは、すまんな。こども扱いが過ぎたか」
ムっとして言えば今度は声に出して笑われてしまった。
こちらがどう反論したところで笑って流されるのが目に見えている。苛立ちを諦めるように深く息を吐いて茶を一口飲んだ。
「……だが、少し当たっている」
じんわりと口の中に温かさが広がる。
平安生まれの刀から見れば自分などまだまだこどものようなもの。
「見上げた先には、いつも……月があったからな」
初期刀としてこの本丸に古くからいても在り方も、強さも、この目の前にいる月に敵うとは思えない。届かないとわかっていても手を伸ばし続けているような、そんな憧憬を抱いていたこともバレているのかもしれない。
「それが、俺の見てきた景色だ」
「そうか」
先ほどとは違う笑みを浮かべ三日月宗近は頷いた。
「ところで、これはなんの茶だ? 緑茶かと思ったが味が違う」
「あぁ、これはだな。寝る前に飲むのにいいものを、と頼んだら出てきたのだ」
「ふっ……あんたらしい」