【未完】初期刀:山姥切
本丸に異変が発生してから一週間。これ以上悪化も好転することもなく、政府からの連絡も途絶えたまま。いつまでも緊張状態にあっては身が持たないという判断から本丸を平常通り動かすことになった。主には現状を、簡単にかつ不安にならないように、説明をした。戦時中であることに変わりはない、ということで理解を得られた。
他の刀剣男士たちにも同じような説明をし、一部出陣以外は今まで通りにということになった。
唯一以前のように過ごせていない一振りもいるが。
「おい、そろそろ休んだらどうだ」
夜が随分と深くなった頃、執務室に籠り本丸内の各データと政府からの連絡を常に確認している初期刀に声をかける。
手伝いをしていた兄弟や鯰尾は時折様子を見に来るものの、初期刀に言われた通り元の生活を送っている。近侍の交代制も復活するかと思いきや、そこも戻らなかった。近侍とは名ばかりで今はほとんど初期刀の補助をしているようなもの。
俺の声に反応した初期刀の顔には疲労の色が出ていた。戦に出ずっぱりになれば疲労状態になるが、出ていなくてもなるという知見を得た。それほど神経をすり減らしているのだろう。
「状況は?」
「第一部隊が大坂の陣での任務を終えて帰還。第三部隊は遠征に出ている。第二部隊の編制だが、このメンバーで三条大橋に向かってもらうつもりだ」
「……そうだな、彼らなら大丈夫だろう。任せた」
「あぁ。……で、あんたは」
「異常なしだ。本丸の結界の穴は流動的で、弱くなったところから攻め入られても把握していれば対応は出来る」
「そうじゃない。休め、と言っている」
「そうは言っても休んでいられないだろう。この状況で警戒を怠るわけにはいかない」
そんなことこの本丸にいるやつらは全員わかっている。
別に初期刀だからと言って一振りで抱え込む必要はないだろう。兄弟をはじめ、言えば快く手伝ってくれるはずだ。
初期刀のことだ。この本丸を運営するにあたり自分はいなくて問題ないと考え、だからこそこの役目を引き受けているのだろう。
そんなわけがない。あんたがこの本丸の初期刀だから、みんなあんたの指示に従って「いつも通り」過ごしている。
言いたい言葉をぐっと飲み込み、初期方の腕を掴んで無理やり立たせた。
「な、なにを」
「朝餉の時間まで」
されるがままの初期刀を廊下へと放り出す。
「仮眠してこい。ひどい顔だ。モニターするぐらいなら、写しの俺だって出来る」
モニターの見方は兄弟に教わっている。俺だって、出来ることは少しずつ増やしている。
「お前」
何か言おうとした初期刀の言葉を遮るようにぴしゃりと障子を閉めた。
そうだ、あんたも写しだ。今は本科の姿をしているが、同じ山姥切国広。あんたが出来ることなら俺にだって出来るはずだ。
「……すまない、任せた」
障子の向こうでそう言い残すと初期刀の気配は遠のいて行った。
他の刀剣男士たちにも同じような説明をし、一部出陣以外は今まで通りにということになった。
唯一以前のように過ごせていない一振りもいるが。
「おい、そろそろ休んだらどうだ」
夜が随分と深くなった頃、執務室に籠り本丸内の各データと政府からの連絡を常に確認している初期刀に声をかける。
手伝いをしていた兄弟や鯰尾は時折様子を見に来るものの、初期刀に言われた通り元の生活を送っている。近侍の交代制も復活するかと思いきや、そこも戻らなかった。近侍とは名ばかりで今はほとんど初期刀の補助をしているようなもの。
俺の声に反応した初期刀の顔には疲労の色が出ていた。戦に出ずっぱりになれば疲労状態になるが、出ていなくてもなるという知見を得た。それほど神経をすり減らしているのだろう。
「状況は?」
「第一部隊が大坂の陣での任務を終えて帰還。第三部隊は遠征に出ている。第二部隊の編制だが、このメンバーで三条大橋に向かってもらうつもりだ」
「……そうだな、彼らなら大丈夫だろう。任せた」
「あぁ。……で、あんたは」
「異常なしだ。本丸の結界の穴は流動的で、弱くなったところから攻め入られても把握していれば対応は出来る」
「そうじゃない。休め、と言っている」
「そうは言っても休んでいられないだろう。この状況で警戒を怠るわけにはいかない」
そんなことこの本丸にいるやつらは全員わかっている。
別に初期刀だからと言って一振りで抱え込む必要はないだろう。兄弟をはじめ、言えば快く手伝ってくれるはずだ。
初期刀のことだ。この本丸を運営するにあたり自分はいなくて問題ないと考え、だからこそこの役目を引き受けているのだろう。
そんなわけがない。あんたがこの本丸の初期刀だから、みんなあんたの指示に従って「いつも通り」過ごしている。
言いたい言葉をぐっと飲み込み、初期方の腕を掴んで無理やり立たせた。
「な、なにを」
「朝餉の時間まで」
されるがままの初期刀を廊下へと放り出す。
「仮眠してこい。ひどい顔だ。モニターするぐらいなら、写しの俺だって出来る」
モニターの見方は兄弟に教わっている。俺だって、出来ることは少しずつ増やしている。
「お前」
何か言おうとした初期刀の言葉を遮るようにぴしゃりと障子を閉めた。
そうだ、あんたも写しだ。今は本科の姿をしているが、同じ山姥切国広。あんたが出来ることなら俺にだって出来るはずだ。
「……すまない、任せた」
障子の向こうでそう言い残すと初期刀の気配は遠のいて行った。