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【未完】初期刀:山姥切

さっきのは一体なんなんだ。そう問いかけようとしたとき背後から「うむ」とその場にいないはずの声が聞こえてきた。

「三日月宗近……!」

振り返ると部屋の出入り口にいた三日月宗近が、こちらの視線を受けてわざとらしく顎に手を当てうなずいた。

「どうやら、知っているようだな?」

初期刀が疑うように声をかけると、そうだな、と返事をして部屋に入って来る。

「政府のクダ屋だ。援軍要請ではなかったならば、これからが肝要」
「……どういうことだ」

先ほどまで映像が映っていた箇所を見つめ、目を細める。その様子はまるで今起きていること、これからのことを知っているよう。勿体ぶった態度は初期刀でなくても苛立つだろう。

「ただ道連れにするわけにはいかない、といったところか」
「……道連れ、それは」
「あちらの状況は芳しくない。……だが、これで好きなように働ける」

邪魔をした、といつものように笑って三日月宗近はさっさと退出をした。だが一瞬、表情が消えたのを俺は見逃さなかった。

「おい、三日月宗近!」

いったいなんのことだ。この場にいる俺だけがなにも理解していない。話を聞かねば、と慌てて追いかけた。
廊下に出てから先を行く三日月宗近相手に何度も声をかけたが立ち止まらない。様子が明らかにおかしい。自称「じじい」を名乗っているだけあって、普段であれば鷹揚に対応をしてくれる。だが今目の前にいるのは「じじい」などではない。れっきとした刀剣男士だ。

「あぁ、そうだ」

廊下の曲がり角に差し掛かってようやく足が止まった。

「初期刀どのに伝えくれまいか」
「伝える? 直接言ったらどうなんだ」
「白き、月を待て」

なんてことはない、ただの言葉。
それなのに妙な響きを持って、俺の足をその場に縫い留めた。

「頼んだぞ」

俺が動けないのを認めたうえで、三日月宗近はそう言って立ち去っていった。それから少し間を置いて、ようやく金縛りが解けて三日月宗近を追いかけようと曲がり角を覗いたが既にその姿はない。

「くそっ、なんなんだっ」

なにもかも納得がいかない。だが結局言われた通り、初期刀へ言伝を届けるために執務室へと向かった。
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