【未完】初期刀:山姥切
警報音は鳴り止んだものの空が歪む現象は翌朝まで続いた。
初期刀に呼び出された堀川国広、鯰尾藤四郎らは主の執務室に籠りこの状況を情報収集に勤しんでいる。主はいつでも本丸から脱出出来るよう奥の部屋に避難していると聞いたが、終わりのない不安から少々取り乱しがちになっているため信濃藤四郎が付き添っている。
そして俺は、初期刀に呼び出されて慌ただしい執務室に来ていた。
「一時的に政府とやりとりが出来た。そこで得た情報をお前とも共有したい。……今回の警報音、ならびに本丸内の異常はこの本丸だけではない。すべての本丸で発生している」
「……穏やかじゃないな」
「時間遡行軍による本丸および現時間軸への大規模攻撃、これを大侵寇と呼ぶ。この範囲はだんだんと拡大してきており、いつ本丸を攻められてもおかしくない」
「……大侵寇とは。規模が拡大していると言うが……、打って出ることは出来ないのか」
「今のところ、俺たちは政府の言うことを聞くしかない」
「それは、そうなんだが……」
得体の知れない敵からの攻撃。政府からの指示がなければこの状況は続くというのか。
それを俺に伝えてどうするというのか。そんな不満が顔に現れていたのか、初期刀は「それで」と話を続けた。
「お前にはこの事態が解決するまで近侍を頼む」
「は」
「この通り、俺たちは本丸の状況把握並びに情報収集に集中しなくてはならない。近侍を毎日交代することにより発生する情報共有の時間が正直惜しい。なら、固定でという話になった」
「ま、待ってくれ。別に俺じゃなくても」
「お前が適任だと、ここにいるものたちの意見は一致している」
助けを求めるように初期刀の後ろで作業をしている兄弟や鯰尾藤四郎を見たが、疲れの見える笑顔が返ってきた。どうやら本当に意見は一致しているようだ。
どうして。それは、俺が山姥切国広だからか。初期刀の代わりをしろというのか。いや初期刀は初期刀の役割を果たしている。なら、俺が近侍に据え置かれる役割とは。
「それで早速現状を本丸の皆に報告を頼みたいんだが」
初期刀からの指示を遮るように、ピッ、と乾いた電子音が鳴った。
「山姥切さんっ」
鯰尾藤四郎の焦った声に初期刀が駆け寄る。そちらを見ると、表示されている画面に重なるように【入電】という文字が表示されていた。
政府から連絡が届いたのか。初期刀の後ろからその画面を覗くと【高度暗号通信傍受】【現在解読中】と画面の表示が切り替わっていく。
【解読終了】
【画像不鮮明】
【出力開始】
砂嵐の音とともに映像が映し出される。ノイズ交じりの映像には見たことのない人物が映し出されていた。狐の面によって表情はわからない。
『『大侵寇』、勢い衰えず』
雑音交じりの音声が流れる。
『本部への跳躍経路へ浸食あり。政府はこれより、緊急防衛態勢に入る』
淡々とした口調で告げるには合わない内容。
『以降は自立プログラムにて、管狐を通じ本丸の機能を継続』
言っている内容はさっぱりわからない。が、一緒に聞いている初期刀たちは緊張した面持ちだ。心なしかこんのすけも眉間に皺を寄せているように見える。
『……八雲、絶つ』
少し間を置いて映像の人物が告げる。
『生き残れ』
ぷつりと映像はそこで途切れた。
初期刀に呼び出された堀川国広、鯰尾藤四郎らは主の執務室に籠りこの状況を情報収集に勤しんでいる。主はいつでも本丸から脱出出来るよう奥の部屋に避難していると聞いたが、終わりのない不安から少々取り乱しがちになっているため信濃藤四郎が付き添っている。
そして俺は、初期刀に呼び出されて慌ただしい執務室に来ていた。
「一時的に政府とやりとりが出来た。そこで得た情報をお前とも共有したい。……今回の警報音、ならびに本丸内の異常はこの本丸だけではない。すべての本丸で発生している」
「……穏やかじゃないな」
「時間遡行軍による本丸および現時間軸への大規模攻撃、これを大侵寇と呼ぶ。この範囲はだんだんと拡大してきており、いつ本丸を攻められてもおかしくない」
「……大侵寇とは。規模が拡大していると言うが……、打って出ることは出来ないのか」
「今のところ、俺たちは政府の言うことを聞くしかない」
「それは、そうなんだが……」
得体の知れない敵からの攻撃。政府からの指示がなければこの状況は続くというのか。
それを俺に伝えてどうするというのか。そんな不満が顔に現れていたのか、初期刀は「それで」と話を続けた。
「お前にはこの事態が解決するまで近侍を頼む」
「は」
「この通り、俺たちは本丸の状況把握並びに情報収集に集中しなくてはならない。近侍を毎日交代することにより発生する情報共有の時間が正直惜しい。なら、固定でという話になった」
「ま、待ってくれ。別に俺じゃなくても」
「お前が適任だと、ここにいるものたちの意見は一致している」
助けを求めるように初期刀の後ろで作業をしている兄弟や鯰尾藤四郎を見たが、疲れの見える笑顔が返ってきた。どうやら本当に意見は一致しているようだ。
どうして。それは、俺が山姥切国広だからか。初期刀の代わりをしろというのか。いや初期刀は初期刀の役割を果たしている。なら、俺が近侍に据え置かれる役割とは。
「それで早速現状を本丸の皆に報告を頼みたいんだが」
初期刀からの指示を遮るように、ピッ、と乾いた電子音が鳴った。
「山姥切さんっ」
鯰尾藤四郎の焦った声に初期刀が駆け寄る。そちらを見ると、表示されている画面に重なるように【入電】という文字が表示されていた。
政府から連絡が届いたのか。初期刀の後ろからその画面を覗くと【高度暗号通信傍受】【現在解読中】と画面の表示が切り替わっていく。
【解読終了】
【画像不鮮明】
【出力開始】
砂嵐の音とともに映像が映し出される。ノイズ交じりの映像には見たことのない人物が映し出されていた。狐の面によって表情はわからない。
『『大侵寇』、勢い衰えず』
雑音交じりの音声が流れる。
『本部への跳躍経路へ浸食あり。政府はこれより、緊急防衛態勢に入る』
淡々とした口調で告げるには合わない内容。
『以降は自立プログラムにて、管狐を通じ本丸の機能を継続』
言っている内容はさっぱりわからない。が、一緒に聞いている初期刀たちは緊張した面持ちだ。心なしかこんのすけも眉間に皺を寄せているように見える。
『……八雲、絶つ』
少し間を置いて映像の人物が告げる。
『生き残れ』
ぷつりと映像はそこで途切れた。