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【未完】初期刀:山姥切

警報音が鳴ったあとすぐに審神者の執務室へと駆け付けた。主もどうして警報音が鳴っているのかわからず、どうにか止めようとパニックに陥っていた主を宥め、ひとまず警報音を止めたあと、本丸内部の様子を空中ディスプレイに展開させた。
本丸内部の警備状況、結界の強度、他さまざまなデータを展開しているものの原因は不明。結界にまだらに穴が空くもののすぐに埋まり、埋まったかと思うと別の箇所の強度低下エラーが表示される。いつもであれば一定の数値が目まぐるしく変わっていく。

「こんのすけ、政府との連絡は」

異常を報せようとしたが繋がらない。

「試みてはいるんですが繋がりません」

泣き出しそうなこんのすけに諦めず続けてくれ、と伝えて改めてデータに視線を移した。
時間遡行軍による攻撃の可能性が脳裏をよぎる。しかし敵は一向に姿を現さない。政府と連絡がつかないことから、ただのシステム不備で済めばいいのだがどうにも嫌な予感がする。
念のため主には本丸の最奥部、脱出ポットのある部屋に移動してもらった。不安だから傍にいてほしい、と縋られた手を「大丈夫だ」とほどいた。

「この手のシステムに強い鯰尾藤四郎を呼んでくる。近侍の堀川国広が戻ってきたらモニターチェックと主の様子を見るように伝えてくれ」

連絡を試みているこんのすけにそう言うと執務室をあとにした。
穏やかな時が流れる本丸には似合わない耳障りな音に思わず舌打ち。
こういうとき本科だったらどうするか。自分が写しだからこんなにも対応がうまくいかないのか。答えのない自己嫌悪が自分を飲み込んでいく。
各自部屋で待機するようにと近侍を通して伝わっているはずなので、まっすぐ鯰尾藤四郎の部屋と向かう。途中外廊下を通りかかったとき、空を見上げる三日月宗近と遭遇した。

「部屋で待機というのは伝わってなかったのか?」

そう声をかけるとゆっくりとこちらに顔を向けた。

「月をな、見ていた」
「月?」

三日月宗近につられるように見上げると、ノイズの走る空にか細い月がうっすらと見えた。西へとだいぶ傾いており、明るいうちに沈むだろう。

「月を見て、何を思う?」
「え?」

意図を理解出来ない問いに聞き返してみたものの、三日月宗近は微笑むだけで答えない。

「……さて、部屋で待機だったかな」

こちらの様子を少し伺ったあと、くるりとこちらに背を向けさっさと歩きだした。さきほどの問いはどういうことだ、と手を伸ばして制止を求めてみたがかわすような笑い声だけが返って来た。

「……なんなんだ、あのじじいは」
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