【未完】初期刀:山姥切
その後再出撃したものの『可』以上の評定を得ることが出来ないまま特命調査は終わった。あのとき戦った俺と同じ姿の仮想の敵は、出てこなかった。一度撃破すれば十分だったのだろうか。
特命調査後は日常が戻ってきた。定期的な出陣と遠征。畑当番に手合わせ。戦いは続いているものの、穏やか日々が続いた。
そんな中で俺は通常の出陣でも部隊長に選ばれるようになり、近侍のローテーションメンバーにいつの間にか組み込まれていた。出来ればずっと近侍でいてほしいと主が望んでいるらしいが、主が本当に望んでいるのは初期刀である山姥切国広だろう。俺ではない、という引け目と、また新参者であるから交代制を希望した。
一方初期刀は本格的に隠居しようとしているように思えた。近侍当番の回数を減らし、出陣も余程の難敵に遭遇しない限りしなくなった。畑当番と時々ある遠征任務が日課となっている。自分が本丸の運営に携わらなくても大丈夫だと確信したときに、刀解を申し出るのではないか、と横顔を見ながら心配している。
「なんだい、国広の」
以前と変わらない呼び方で、初期刀は俺に微笑む。
昼食時、たまたま隣の席に座った初期刀の横顔を見ていたのがバレて気まずそうに頭の襤褸布を引っ張って顔を隠した。食事は各々都合がいいタイミングで食べに来るため、食堂にはさほどひとはいない。
「……近頃、出陣していなくて退屈じゃないのか」
「俺が出陣する必要性がないほど、この本丸が強くなったということだ」
「この本丸にはあんたが必要だ」
「ひとつの力に頼りきっていると、そこが弱点になりかねない。欠けても耐えられる強さが必要になってくる」
「あんたは、」
ビー! ビー!
問いかけを遮るようにけたたましい音が本丸に鳴り響いた。警報音だとすぐにわかったが一体何が起きたのか。
初期刀はすぐに食堂を飛び出しいった。俺も残されたメンバーとともに本体を持って外へ飛び出して見ると、空が歪んでいた。ジジ……と耳障りな音と共鳴するように、空が歪み、欠けている。本丸に張られた結界が綻んでいるのでは、と誰かが言った。
「みなさん! 各自部屋で待機をお願いします!」
今日の近侍であった兄弟、堀川国広が呼びにきた。
「兄弟、一体なにが起きているんだ」
「わからない。今、山姥切さんが主さんの元に来てこんのすけとともに確認している。ひとまず僕は本丸に残っているみんなに声をかけて、待機命令を伝えてくるよ」
「俺も手伝う」
「ありがとう。じゃあ、畑当番と馬当番のところお願いするね」
わかった、と頷いて早速畑当番の元へと向かった。
特命調査後は日常が戻ってきた。定期的な出陣と遠征。畑当番に手合わせ。戦いは続いているものの、穏やか日々が続いた。
そんな中で俺は通常の出陣でも部隊長に選ばれるようになり、近侍のローテーションメンバーにいつの間にか組み込まれていた。出来ればずっと近侍でいてほしいと主が望んでいるらしいが、主が本当に望んでいるのは初期刀である山姥切国広だろう。俺ではない、という引け目と、また新参者であるから交代制を希望した。
一方初期刀は本格的に隠居しようとしているように思えた。近侍当番の回数を減らし、出陣も余程の難敵に遭遇しない限りしなくなった。畑当番と時々ある遠征任務が日課となっている。自分が本丸の運営に携わらなくても大丈夫だと確信したときに、刀解を申し出るのではないか、と横顔を見ながら心配している。
「なんだい、国広の」
以前と変わらない呼び方で、初期刀は俺に微笑む。
昼食時、たまたま隣の席に座った初期刀の横顔を見ていたのがバレて気まずそうに頭の襤褸布を引っ張って顔を隠した。食事は各々都合がいいタイミングで食べに来るため、食堂にはさほどひとはいない。
「……近頃、出陣していなくて退屈じゃないのか」
「俺が出陣する必要性がないほど、この本丸が強くなったということだ」
「この本丸にはあんたが必要だ」
「ひとつの力に頼りきっていると、そこが弱点になりかねない。欠けても耐えられる強さが必要になってくる」
「あんたは、」
ビー! ビー!
問いかけを遮るようにけたたましい音が本丸に鳴り響いた。警報音だとすぐにわかったが一体何が起きたのか。
初期刀はすぐに食堂を飛び出しいった。俺も残されたメンバーとともに本体を持って外へ飛び出して見ると、空が歪んでいた。ジジ……と耳障りな音と共鳴するように、空が歪み、欠けている。本丸に張られた結界が綻んでいるのでは、と誰かが言った。
「みなさん! 各自部屋で待機をお願いします!」
今日の近侍であった兄弟、堀川国広が呼びにきた。
「兄弟、一体なにが起きているんだ」
「わからない。今、山姥切さんが主さんの元に来てこんのすけとともに確認している。ひとまず僕は本丸に残っているみんなに声をかけて、待機命令を伝えてくるよ」
「俺も手伝う」
「ありがとう。じゃあ、畑当番と馬当番のところお願いするね」
わかった、と頷いて早速畑当番の元へと向かった。