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とうらぶ

誰かに頭を撫でてもらう心地よい夢を時折見る。
元々主は俺たちの頭をよく撫でるひとだ。だからその延長で見ているのだろうと思っていた。
俺たちより背の低い主は、こちらが少し屈んだ状態でも、背伸びをして目いっぱい撫でてくれる。よくやった、がんばった、と称賛の意味合いが強い。だが夢の中では、まるで動物を愛でるように、優しく穏やかな手つき。主とは違う手の大きさ。夢だから生じる差異なのだろうけど、どこでそれが生まれたのか全くわからない。
じゃれあいの延長で、仲間たちから襤褸布越しに頭を撫でられることもある。それらは確かに主よりも大きな手のひらだが、違うと断言できる。
では、誰の手が、夢の中で俺の頭を撫でるのか。





初期刀が個室なのはこの本丸が発足してから変わっていない。
本当はひとりひとりに個室を手配してかったらしいのだが、まさかこんなに顕現出来ることになるとは、と審神者は苦笑していた。もちろん個人の意見をちゃんと聞いて、兄弟や刀派など繋がりの希望を聞いて部屋割りをしている、とても面倒見のよい審神者だ。
夜戦を終え、審神者の執務室から自室へ向かう途中、その初期刀の部屋の前を通る。既に明かりが消され、もう眠りについているのだろう。あたりに誰もいないことを確認して、障子に手をかけた。
部屋に入れば、障子の隙間から零れる廊下の明かりで、ぐっすりと眠っている山姥切国広の寝顔が確認出来る。起こさぬよう静かに閉めた。寝床に侵入者が来ても起きる様子がないのもどうかと思うが、そのおかげでささやかな習慣が出来た。――不法侵入を習慣にすることへの後ろめたさはあるが。
枕元へ近づき、音を立てないよう膝をつく。規則正しい寝息は変わらないが、いつも安堵してしまう。
普段は襤褸布で隠されている頭にそっと撫でる。起きているときはどうしても苛立ってしまい強い言葉をぶつけてしまう。明らかに傷ついた顔をしているのを見て、こちらも胸が痛まないわけではない。
ずっと大切に思っているのに。感情を律しきれない己の不甲斐なさにため息が出る。
グローブ越しでもわかる柔らかい金髪を撫で終え「おやすみ」と告げて部屋をあとにした。
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