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とうらぶ

「なんだこれは」

自分と自分の写しそっくりな小さなつくも神にぽろっと感想が口に出た。

「ペーパーナイフだそうだ」

先に事情を把握していた山姥切国広は小さなつくも神たちを抱き上げ、俺と同じ目線に合わせる。

「主が2023年頃? に出かけたときに買ってきたペーパーナイフが顕現したらしくて」
「……過去のものを現代に持ってきたことにより、時間の圧縮的な飛躍が発生、つくも神化したというのか?」
「さすが本科、話が早い」
「……いや。いやいやいやいや? は?」

大昔に政府が似たような実験を行ったが、それにより歴史の改変が起きかねないという判断から破綻した戦力拡充の話を聞いたことがあった。それも噂程度で机上の空論の域を出ていない。
自分で説明をしたもののそれを受け入れるかは別問題である。
国宝や重要文化財等に指定されていない、ごくごく一般的な土産ものであれば問題ないのか。そもそも戦力になりえないものがこういう形で顕現するものなのか。
頭を抱えてうんうんうなっていると小さな手がふわりと頬に触れた。
顔を上げると山姥切国広の姿をしたペーパーナイフが心配そうにこちらを見上げている。
かわいい。とてもかわいい。
自分が考えていることが些末に思えてどうでもよくなった。それぐらいかわいい。
山姥切国広の腕からそっと抱き上げて、やわらかく抱きしめる。冬の日向のような匂いがする。かわいい。

「本科。無言で吸うな。おい、聞いているのか」
「俺の写しがかわいい……」
「俺だってあんたの写しだが?」
「うるさい偽物くん」

拒絶されて落ち込む山姥切国広の頭を、小さな俺が優しくぽんぽんと撫でている。小さくても俺。写しのことは好きなようだ。

「こっちの本科の方が優しい……」
「お前の本歌は俺だが?」
「知っている」
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