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とうらぶ

膝をついて動けなくなった自分の横を、敵がばたばたと乱暴に駆けていく。
自分はもうあいつらの脅威ではなくなった。
おのれの不甲斐なさと無力感、そして申し訳なさに「くそっ」と声が出た。
どうして自分だけこんなにも早く影響が出たのか。審神者個人ではなく、政府に所属しているからか。それでも今は、仮とはいえ、たったひとりの主がいたというのに。

暗転。

次に目を開いたときには、見慣れた部屋がそこにあった。
襲撃されて瓦礫が散らばったあの場所ではない、とすぐにわかった。
戻ってきた。2205年の、与えられた居場所に。
慌ただしく政府職員たちが動いている。あの時代、2012年の異変への対応に追われているのだろう。ひとりがこちらに駆け寄ってきた。眼鏡をかけた、少々冴えない男性職員。政府で確認出来ている現状報告を受けたのち、あの場で対応した刀としての報告と更なる審神者たちへの救助要請を指示。そして再びあの時間軸へ戻ること旨を伝えた。
この任務を受けたときは状況が違う。今度はちゃんと縁が出来、確実にあの場所へ行ける。

「さぁ、行って来ようか」

出陣ゲートをくぐりながら肩越しに後ろを見ると、先ほどの彼が腰を90度に曲げて見送っていた。そんなに腰を折ってはこちらの姿など見えないだろうに、と苦笑しながら2012年へと飛び込んだ。
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