とうらぶ
歴史を守るのが刀剣男士の本能だという。
ならば、この感情はいったいなんだろう。
短刀はその在り方からか懐に入るのが好きだ。落ち着くというのが正しいのかもしれない。
その中でもとりわけ俺は懐に入るのが大好きで、隙あらば誰彼問わずに潜り込んでいる。ここの本丸はみんな優しいので「仕方ないな」と苦笑しながらも邪険にはせず好きにさせてくれる。
ありとあらゆる懐に潜り込んできた俺にでも、潜り込めそうにない相手が出来た。
「うわぁ……」
大将が抱える小さな命に思わず声がもれた。
小さくて、柔らかくて、儚い形をした命。今はすやすやと眠っていて、代わるがわるその寝顔を覗き込む。
当たり前だがさすがにこの小ささでは懐に忍び込めない。というかその概念がない。
「主さん、触ってもいい?」
一緒に見ていた乱が大将に確認を取り、優しくその頬に触れる。
「かわいー」
起こさないように小声でくすくすと笑う。信濃も触ったら、と促されて大将をちらりと見ると微笑みが返ってきた。指の腹で頬に触れる。ふにゃりとした、自分たちや大将とは違う肌の弾力に「わぁ……」と再び声がこぼれた。
「あっ」
指を離そうとしたとき、小さな手が俺の指をきゅっと握った。力なんてない。ただの反射なんだろうけど、それはしっかりと俺の胸も掴んだ。
あらあら、と笑う大将に「俺、この子の守り刀になってもいいかな?」と気がつけば申し出ていた。
それから俺は大将の子どもと一緒に過ごした。
甘えん坊の信濃が大丈夫か? とからかわれることもあったけどそれはそれ。もちろん懐に飛び込むのはやめない。頻度は少し減ったけれど。
「ほーら、高い高―い」
ひとの成長は早い。俺の指を掴んだ手はすっかり大きくなり、ありとあらゆるものを掴めるようになってきた。持つことすら怖くなるような重さも、今はしっかりと感じられる。
「しーな」
大将ゆずりの笑顔で俺を呼ぶ。まだちゃんと発音は出来ないけれど、それがまたたまらなくいとおしい。
「ぎゅーして」
「いっぱいぎゅーしてあげるよ」
相変わらず懐には入れない。けれど代わりに俺の懐にぎゅっと抱きしめる。
子ども特有の匂いに高い体温。命が成長している。その事実が幸せだった。
「しなの」
すっかり俺の名前を呼べるになった頃。しっかり立って歩けるようになり、視線も高さもずいぶんと近づいた。まだ少しばかり俺の方が高いけど。
「ん」
少しぶっきらぼうに、両手を差し出す。仕方ないなぁ、とわざとらしく言ってからわきの下の手を入れ持ち上げた。重くなったけれど自分は刀剣男士。このくらいどうということはない。自分の首に腕を回させ、落ちないように尻の下に腕を通す。
この頃になると俺の甘え癖が移ったなどとやいのやいの言われた。それはそうだろう。この本丸でこの子と一番過ごしているのは自分なのだから、大将の次に似るのは嬉しかった。
このまま健やかに育ち、いずれ旅立つときが来るのだろう。もし大将と同じ審神者の道を選ぶなら同行したい。過保護すぎると厚あたりに言われるかもしれないが、俺は守り刀だから。どこまでも守りたいと思う。
ならば、この感情はいったいなんだろう。
短刀はその在り方からか懐に入るのが好きだ。落ち着くというのが正しいのかもしれない。
その中でもとりわけ俺は懐に入るのが大好きで、隙あらば誰彼問わずに潜り込んでいる。ここの本丸はみんな優しいので「仕方ないな」と苦笑しながらも邪険にはせず好きにさせてくれる。
ありとあらゆる懐に潜り込んできた俺にでも、潜り込めそうにない相手が出来た。
「うわぁ……」
大将が抱える小さな命に思わず声がもれた。
小さくて、柔らかくて、儚い形をした命。今はすやすやと眠っていて、代わるがわるその寝顔を覗き込む。
当たり前だがさすがにこの小ささでは懐に忍び込めない。というかその概念がない。
「主さん、触ってもいい?」
一緒に見ていた乱が大将に確認を取り、優しくその頬に触れる。
「かわいー」
起こさないように小声でくすくすと笑う。信濃も触ったら、と促されて大将をちらりと見ると微笑みが返ってきた。指の腹で頬に触れる。ふにゃりとした、自分たちや大将とは違う肌の弾力に「わぁ……」と再び声がこぼれた。
「あっ」
指を離そうとしたとき、小さな手が俺の指をきゅっと握った。力なんてない。ただの反射なんだろうけど、それはしっかりと俺の胸も掴んだ。
あらあら、と笑う大将に「俺、この子の守り刀になってもいいかな?」と気がつけば申し出ていた。
それから俺は大将の子どもと一緒に過ごした。
甘えん坊の信濃が大丈夫か? とからかわれることもあったけどそれはそれ。もちろん懐に飛び込むのはやめない。頻度は少し減ったけれど。
「ほーら、高い高―い」
ひとの成長は早い。俺の指を掴んだ手はすっかり大きくなり、ありとあらゆるものを掴めるようになってきた。持つことすら怖くなるような重さも、今はしっかりと感じられる。
「しーな」
大将ゆずりの笑顔で俺を呼ぶ。まだちゃんと発音は出来ないけれど、それがまたたまらなくいとおしい。
「ぎゅーして」
「いっぱいぎゅーしてあげるよ」
相変わらず懐には入れない。けれど代わりに俺の懐にぎゅっと抱きしめる。
子ども特有の匂いに高い体温。命が成長している。その事実が幸せだった。
「しなの」
すっかり俺の名前を呼べるになった頃。しっかり立って歩けるようになり、視線も高さもずいぶんと近づいた。まだ少しばかり俺の方が高いけど。
「ん」
少しぶっきらぼうに、両手を差し出す。仕方ないなぁ、とわざとらしく言ってからわきの下の手を入れ持ち上げた。重くなったけれど自分は刀剣男士。このくらいどうということはない。自分の首に腕を回させ、落ちないように尻の下に腕を通す。
この頃になると俺の甘え癖が移ったなどとやいのやいの言われた。それはそうだろう。この本丸でこの子と一番過ごしているのは自分なのだから、大将の次に似るのは嬉しかった。
このまま健やかに育ち、いずれ旅立つときが来るのだろう。もし大将と同じ審神者の道を選ぶなら同行したい。過保護すぎると厚あたりに言われるかもしれないが、俺は守り刀だから。どこまでも守りたいと思う。
