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とうらぶ

「愛されたい」

机に肘をつき、ため息と一緒にぽろっと出てしまった言葉。すぐにしまったと思わず口を手でふさぐも、出てしまったものは戻らない。さらに悪いことにそれを聞いた相手が資料を片手にこちらをじっと見つめている。
別に愛されていないわけではない。
家族の仲は良好だし、この本丸では大切に扱われている。恋人はいないが、別にそれに対して寂しいという思いもない。
じゃあどうして、と聞かれると困る。
ただただぽろっとこぼれてしまっただけなのだ。だからこそ余計に近侍の、山姥切長義の視線が刺さる。

「……それ、は」

しばらくして山姥切長義が口を開いた。

「誰かに許されたいのかな?」
「許されたい……?」

予想外の言葉に思わず復唱した。
許されたい? なにを?

「家族仲は良好だと聞いているし、この本丸で不当な扱いをしたりされたりしている様子はない。でもそう思って言葉に出てしまうのは、誰かに――この場合、家族以外の誰かに許されたいのでは、と思っただけだよ」
「家族以外って……家族のようには思っているけど本丸のみんなは違うし」
「審神者の霊力で顕現されているのだから身内のようなものだろう。必然的に、主をいとおしいと思う気持ちが基盤にあるのだから」

そういうものなのだろうか。
いまいち納得出来ないでいると、目の前に影が落ちてきた。
顔を上げると山姥切長義が立っており、こちらを見下ろしている。

「俺が愛してあげようか」

まとめられた資料とともに差し出された提案に「え?」と間の抜けた声が出た。

「俺は政府で顕現されたので主の霊力を介していない。悪く言えば身内ではない」
「いやもう身内みたいなもんでしょ」
「それはありがたいな。……まぁだからこそ、俺は主を許せる自信がある」

この本丸で顕現したわけではない。けれどもう随分とこの本丸に馴染んできている、身内だけど身内ではない刀。他人と呼ぶには近いし、家族と呼ぶには遠い。
その距離はまるで。

「愛しているよ、主」
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