【未完】初期刀:山姥切
ひとりで存在しない一振り目の山姥切国広のことを考えているのが馬鹿らしくなってきたある日。
少しずつ本科の、近侍の仕事を覚えるために手伝いをしていた。そのうちのひとつ、本丸に届いた郵便物をポストから回収していると珍しく時の政府からのものがあった。
ボールペンよりやや長めの棒状のそれは、政府から届く手紙の一種。特定の操作をすると内容が空中に映し出されるのだが、デジタルなのかアナログなのかよくわからない。一応親展扱いの手紙になるのだが、ほぼ審神者宛しか来ない。本科曰く、その機械の在庫が余っているんじゃないかな、と。
「俺宛て?」
どうせ主宛てだろうと思ったら宛先名は山姥切国広。ご丁寧に刀紋まで添えられている。時の政府が写しの俺宛てに一体なにを送ってきたというのか。
しかしこの手紙の扱いがわからない。ひとまず他の郵便物を手に主の元へと向かった。
主の部屋に入ると近侍である本科となにか打ち合わせをしていた。
「郵便物を持ってきた」
「あぁ、ありがとう」
本科に郵便物を渡していつもなら下がるが今日は聞きたいことがある。
「主、少し時間いいだろうか」
主はちらりと本科を見たあと、問題ない、と返した。本科は近侍用の机に戻り郵便物の確認を始めた。
「政府から俺宛てになにか届いているのだが、これの見方を教えてほしい」
棒状の手紙を主に差し出す。宛先を間違えているのかもしれないが、刀紋まで添えられているからその可能性は低い。
受け取った主はまじまじとそれを見つめたあと、いくつか操作をしてみせたが手紙は一向に開かない。いつもならこの操作で開くのだけど、と宛先名をなぞる動作を見せてくれた。親展扱いの手紙のため、宛先以外の相手の操作を受け付けないのかもしれないと手紙を返される。先ほど主が見せてくれた動作をしてみるが、やはり手紙は沈黙したまま。俺が写しだからか。
「不具合でもあったかな?」
受け取った郵便物の中身を確認を終えた本科が話にまざってきた。
「これが読めないんだ」
俺と主の操作を受け付けない手紙を本科を渡す。ふむ、と様々な角度から見たのち先ほど俺が試したように宛先を指でなぞった。
ブゥン……
僅かに空気を震わせ手紙が開いた。
えっ、と主が驚く。本科も驚いているようだった。
小さな起動音と共に手紙の内容が空中に映し出されるが本科側からしか見えない。
「……なるほど、そういうことか」
手紙の内容に一通り目を通した本科は珍しく不愉快げであった。
「本科、これは」
その様子にたまらず手紙の内容を尋ねた。
「お前宛ての内容で問題ない。が、このように俺が開けてしまったから俺しか読めなくなっている。……全く、面倒な不具合だな」
やれやれ、と本科は呆れた様子で手紙を閉じた。それでどういう内容だったのかと主も催促する。
「……山姥切国広の、修行が決まったという知らせだよ」
「修行……?」
少しずつ本科の、近侍の仕事を覚えるために手伝いをしていた。そのうちのひとつ、本丸に届いた郵便物をポストから回収していると珍しく時の政府からのものがあった。
ボールペンよりやや長めの棒状のそれは、政府から届く手紙の一種。特定の操作をすると内容が空中に映し出されるのだが、デジタルなのかアナログなのかよくわからない。一応親展扱いの手紙になるのだが、ほぼ審神者宛しか来ない。本科曰く、その機械の在庫が余っているんじゃないかな、と。
「俺宛て?」
どうせ主宛てだろうと思ったら宛先名は山姥切国広。ご丁寧に刀紋まで添えられている。時の政府が写しの俺宛てに一体なにを送ってきたというのか。
しかしこの手紙の扱いがわからない。ひとまず他の郵便物を手に主の元へと向かった。
主の部屋に入ると近侍である本科となにか打ち合わせをしていた。
「郵便物を持ってきた」
「あぁ、ありがとう」
本科に郵便物を渡していつもなら下がるが今日は聞きたいことがある。
「主、少し時間いいだろうか」
主はちらりと本科を見たあと、問題ない、と返した。本科は近侍用の机に戻り郵便物の確認を始めた。
「政府から俺宛てになにか届いているのだが、これの見方を教えてほしい」
棒状の手紙を主に差し出す。宛先を間違えているのかもしれないが、刀紋まで添えられているからその可能性は低い。
受け取った主はまじまじとそれを見つめたあと、いくつか操作をしてみせたが手紙は一向に開かない。いつもならこの操作で開くのだけど、と宛先名をなぞる動作を見せてくれた。親展扱いの手紙のため、宛先以外の相手の操作を受け付けないのかもしれないと手紙を返される。先ほど主が見せてくれた動作をしてみるが、やはり手紙は沈黙したまま。俺が写しだからか。
「不具合でもあったかな?」
受け取った郵便物の中身を確認を終えた本科が話にまざってきた。
「これが読めないんだ」
俺と主の操作を受け付けない手紙を本科を渡す。ふむ、と様々な角度から見たのち先ほど俺が試したように宛先を指でなぞった。
ブゥン……
僅かに空気を震わせ手紙が開いた。
えっ、と主が驚く。本科も驚いているようだった。
小さな起動音と共に手紙の内容が空中に映し出されるが本科側からしか見えない。
「……なるほど、そういうことか」
手紙の内容に一通り目を通した本科は珍しく不愉快げであった。
「本科、これは」
その様子にたまらず手紙の内容を尋ねた。
「お前宛ての内容で問題ない。が、このように俺が開けてしまったから俺しか読めなくなっている。……全く、面倒な不具合だな」
やれやれ、と本科は呆れた様子で手紙を閉じた。それでどういう内容だったのかと主も催促する。
「……山姥切国広の、修行が決まったという知らせだよ」
「修行……?」