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【未完】初期刀:山姥切

この本丸の初期刀は山姥切長義である。
審神者はもちろん兄弟を始め、他の皆に確認してもその事実は変わらなかった。信濃藤四郎にも改めて聞いたところ「俺の勘違いだったみたい」と謝罪された。どうやら初期刀に選ばれた五振りのうち、銘が同じである俺と混ざってしまったらしい。鯰尾藤四郎や後藤藤四郎にすごく注意された、と信濃藤四郎はため息をついた。

「うちの本丸じゃなかったら山姥切さんにものすごーく怒られていたぞ、て釘を刺されたよ」
「そうなのか?」
「演練とかで見るよその山姥切さんは雰囲気違うし、話を聞くとちょっと気難しそうだから……詳しくはわからないけど、なんとなくわかる、ていうか」

言わんとしていることはなんとなくわかる。以前話しかけてきた本科はどことなくぴりついた雰囲気だった。この本丸の本科もたまにそんな雰囲気をまとうことはあるがそれは戦闘中だったり、俺がなにか失言したときだったりと常時ではない。


『こ、この本丸にかつていた、山姥切国広について聞きたいことがある』


そのときのこと思い出すと、あることに気づいた。

「……なぁ、この本丸には俺以外の山姥切国広がいたと聞いたことあるか?」

本科にそう尋ねたときに雰囲気が変わった。初期刀が本科で、俺自身が一振り目の山姥切国広だとしたらその反応はおかしい。
それに、その問いに対して答えは得られていない。

「聞いたことはないかな……俺が初期刀のことを勘違いしただけだし」
「おーい信濃ー」

話を割り込むように後藤藤四郎が信濃藤四郎を呼びにきた。

「お前、今日畑当番だったろ」
「あ、そうだった!じゃあまたねまんばさん!」
「あ、あぁ……」

バタバタと去っていく二振りを見送りひとりぽつんと残された。
本科の態度は自分が二振り目だからだと思っていたが違うようだ。温和な性格なのは個体差なのか。いや、なにか引っかかる。それがなんなのかわからない。自分が写しだからわからないのか。
疑っているわけではない。ただ、もやもやとしたものが胸を占めて息苦しい。どうしようもないのに己の胸をぎゅっと握った。
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