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【未完】初期刀:山姥切

本科の瞳の色は蒼から翠へと変化するグラデーションだ。違う本丸の本科の瞳がどこまでも落ちて吸い込まれそうな蒼で怖くなったのを覚えている。うちの本丸にいる本科の瞳を見てもそんなことにはならないので、個体差というやつだろう。

「どうしたのかな、まじまじと見て」

瞳を見ていれば、必然と目が合う。ましてや観察するように、まさにまじまじと見ていたのだから。気まずさに「すまない」と頭の布を引っ張る。

「……なにか、聞きたいことがあるんだろ?」

今日の内番のメンバーを変えていた本科が手を止める。いや、変え終えたからこそ俺の方を向いた。
聞きたいことが特にあったわけではない。本科のその美しい瞳を確認したかっただけなのだが、それを口にするのは少々恥ずかしい。
そのとき脳裏によぎったのは信濃藤四郎との話だ。

「こ、この本丸にかつていた、山姥切国広について聞きたいことがある」

本科の目がすうっと細くなり、まとう空気が変わった。それはよその本丸の本科がまとっていたものと同じで、思わず怯み半歩下がってしまった。

「それは、誰から聞いた?」
「し、信濃藤四郎からだ。この本丸の初期刀は山姥切国広だった、と。だが山姥切国広は今は俺しかいない。どうしたのか、気になったんだ」
「信濃藤四郎から?」

ふっ、と本科の空気がいつものに戻った。それに安堵している間に「なら鯰尾あたりか……」と顎に手を当て本科はなにか考えていた。

「それならきっと、勘違いだよ」
「えっ」

にこりと本科が笑う。

「この本丸の初期刀は、この俺だからね」
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