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一次創作

「大人になったら結婚しようね」

大好きだった春ちゃん。答えは「うん!」だったところまではっきり覚えている。このあと自分が引っ越すことになり、幼すぎてお互い連絡手段を得られないまま大人になってしまった。約束はもう無効だろう。
どうしてそんな懐かしい思い出を思い出したかというと、昼飯を食べながらぼんやり見ていたバラエティ番組のせい。
ゲストに来ている女優が結婚願望に聞かれて答えていた。

『小さい頃に結婚しようって約束してくれた子がいて。その約束のあとその子は引っ越してしまいもう会えてないんですけど。私の中ではその約束がまだ生きてて』
『もしその子が結婚してたら?』
『もしそうでも、それを知るまでは守ろって思ってます』

男装の麗人として話題の女優は、そのときは恋する乙女の表情をしていた。のちにそのギャップがネットで話題になったのを知る。
名前は芸名で本名とは違う。けれど春を感じさせるその名前と、はにかんだ笑みを見て「春ちゃん」だと思ってしまった。
ひと違いかもしれない。春ちゃんだという確証もないし、もしそうであっても約束の相手が自分とは限らない。届かない画面の向こうの彼女は、恋バナをしているときが一番魅力的だった。
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