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Your Name
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転機が訪れたのは、
私宛に手紙が届いた時だった
早朝、コトンと郵便受けから物音がしたので
目を覚ましそれをとりにいく
新聞とチラシ、に混ざって
白い封筒が郵便受けの底に落ちていた
誰からだろう、
母宛の手紙だと思い、手に取れば
封には高級感のある深紅の蝋が押されていた
識字の勉強などさせてもらえる筈もなく、
簡単なアルファベットと自分の名前しか読み書きのできない私だったが、
その封筒の宛名に紛れもない私自身の名前を見つけた
だれ?
なに?
この街から出たこともない
知り合いもいない、そんな私に当てられた手紙とは?
一体だれが何の為に送ってきたのか
9時を過ぎた頃、
玄関の戸を開ける音がした。
不機嫌そうに靴を脱ぐ母の上着と荷物を預かりリビングへと運ぶ
労いの言葉をかけながら
お茶を淹れている間に、母は白封筒に気がついた
「なにこれ」
白封筒の入り口を破き、中から3枚ほど折られた紙を取り出した。
カップに注いだお茶をテーブルに置いたところで、私の顔に母の手が飛んできた
床に叩きつけられたがすぐに体勢を整えて母をみれば彼女は不機嫌に不機嫌を塗りつけた表情をしていた
「アンタ、これはなに?」
「今朝、郵便受けに入っていて…」
「私がいない間に誰か家に入れたの?」
「いれてない」
「じゃあ買い物にいく途中に誰かとベラベラお喋りでもしたってわけ?」
「してない」
母を刺激しないように言葉を選びながら答える、が、母の口調はどんどん鋭くなっていった
「じゃあなんでこんな手紙がアンタ宛にくんのよ!!アンタのこと知らなきゃ有り得ない話でしょ!!?こんなイタズラ、不快にさせる以外ないじゃない?!あたしへの嫌がらせなの!?なんなのよ!!」
金切声が耳に届くのと一緒に頭部に痛みが走る
髪の毛を掴まれ、再度床に叩き落とされた
母は舌打ちをすると白封筒をビリビリに破り捨てて自室へと向かっていった
翌日、
郵便受けを覗くと、
同じ印の手紙がまた入っていた
宛名はまた、私に。
私は母が怒る理由が分からなかった
その理由はこの手紙の内容にあるのだろうが、私には文字が読めなかった
私はこの好奇心を抑えるように手紙を自分の毛布の中に仕舞い込んだ
その日の買い出しで、また遠回りして住宅地の道を使う
ここには近所のゴミをまとめているエリアがあり、私はそこに立ち寄った
今日は古紙の回収日だ
纏められた新聞、書籍がまとめられて捨てられている
私はその中からいくつか適当に本を引っ張り出し、自分の手荷物の中に仕舞い込んだ
母が家を出てから、私は僅かな蝋燭の明かりの中でゴミ捨て場から持って帰った本を開く
当然読める訳がなかったが、挿絵と文を見比べてわからないながらも少しずつ理解を深めた
次の日には捨てられていた絵本を持ち帰った
母が幼い頃から読み聞かせてくれたお話の絵本だった
これなら内容がわかる分、文字の理解も早そうだった
少しずつ、私は文字を独学で学んでいった
手紙は毎日届いた
母に見つからないように手紙が届いてすぐ隠さねばならないと、
投函されてすぐに手元に置くために配達員を待っていたが、
不思議なことに、手紙は梟がどこからともなく運んでくるのだ
配達員らしき人物は周りにはおらず、
郵便受けの中にコトンと封筒が落ちて、羽ばたく音と共にどこかに消えてしまう
手紙は暫く毛布の中に隠していたが、数に限界を迎えて何通かは暖炉の薪の火付け材として処理をした
少しずつ、字を覚えるのと同時に
手紙の内容も分かってきた
しかし、全容を把握するのは難しかった
数日後の夕方、買い出しのために
家に鍵をかけ、振り向いたところに
一人の初老の男が立っているのに気がついた
男は三角帽子を被り、長い裾の服を着ていた
スピナーズ・エンドでは見慣れない服装だ
目が合う、というより
男はわたしをみていた
会釈をして、立ち去ろうとすると男は
歩き出し、私の前で立ち止まった
「君がキラだね」
私宛に手紙が届いた時だった
早朝、コトンと郵便受けから物音がしたので
目を覚ましそれをとりにいく
新聞とチラシ、に混ざって
白い封筒が郵便受けの底に落ちていた
誰からだろう、
母宛の手紙だと思い、手に取れば
封には高級感のある深紅の蝋が押されていた
識字の勉強などさせてもらえる筈もなく、
簡単なアルファベットと自分の名前しか読み書きのできない私だったが、
その封筒の宛名に紛れもない私自身の名前を見つけた
だれ?
なに?
この街から出たこともない
知り合いもいない、そんな私に当てられた手紙とは?
一体だれが何の為に送ってきたのか
9時を過ぎた頃、
玄関の戸を開ける音がした。
不機嫌そうに靴を脱ぐ母の上着と荷物を預かりリビングへと運ぶ
労いの言葉をかけながら
お茶を淹れている間に、母は白封筒に気がついた
「なにこれ」
白封筒の入り口を破き、中から3枚ほど折られた紙を取り出した。
カップに注いだお茶をテーブルに置いたところで、私の顔に母の手が飛んできた
床に叩きつけられたがすぐに体勢を整えて母をみれば彼女は不機嫌に不機嫌を塗りつけた表情をしていた
「アンタ、これはなに?」
「今朝、郵便受けに入っていて…」
「私がいない間に誰か家に入れたの?」
「いれてない」
「じゃあ買い物にいく途中に誰かとベラベラお喋りでもしたってわけ?」
「してない」
母を刺激しないように言葉を選びながら答える、が、母の口調はどんどん鋭くなっていった
「じゃあなんでこんな手紙がアンタ宛にくんのよ!!アンタのこと知らなきゃ有り得ない話でしょ!!?こんなイタズラ、不快にさせる以外ないじゃない?!あたしへの嫌がらせなの!?なんなのよ!!」
金切声が耳に届くのと一緒に頭部に痛みが走る
髪の毛を掴まれ、再度床に叩き落とされた
母は舌打ちをすると白封筒をビリビリに破り捨てて自室へと向かっていった
翌日、
郵便受けを覗くと、
同じ印の手紙がまた入っていた
宛名はまた、私に。
私は母が怒る理由が分からなかった
その理由はこの手紙の内容にあるのだろうが、私には文字が読めなかった
私はこの好奇心を抑えるように手紙を自分の毛布の中に仕舞い込んだ
その日の買い出しで、また遠回りして住宅地の道を使う
ここには近所のゴミをまとめているエリアがあり、私はそこに立ち寄った
今日は古紙の回収日だ
纏められた新聞、書籍がまとめられて捨てられている
私はその中からいくつか適当に本を引っ張り出し、自分の手荷物の中に仕舞い込んだ
母が家を出てから、私は僅かな蝋燭の明かりの中でゴミ捨て場から持って帰った本を開く
当然読める訳がなかったが、挿絵と文を見比べてわからないながらも少しずつ理解を深めた
次の日には捨てられていた絵本を持ち帰った
母が幼い頃から読み聞かせてくれたお話の絵本だった
これなら内容がわかる分、文字の理解も早そうだった
少しずつ、私は文字を独学で学んでいった
手紙は毎日届いた
母に見つからないように手紙が届いてすぐ隠さねばならないと、
投函されてすぐに手元に置くために配達員を待っていたが、
不思議なことに、手紙は梟がどこからともなく運んでくるのだ
配達員らしき人物は周りにはおらず、
郵便受けの中にコトンと封筒が落ちて、羽ばたく音と共にどこかに消えてしまう
手紙は暫く毛布の中に隠していたが、数に限界を迎えて何通かは暖炉の薪の火付け材として処理をした
少しずつ、字を覚えるのと同時に
手紙の内容も分かってきた
しかし、全容を把握するのは難しかった
数日後の夕方、買い出しのために
家に鍵をかけ、振り向いたところに
一人の初老の男が立っているのに気がついた
男は三角帽子を被り、長い裾の服を着ていた
スピナーズ・エンドでは見慣れない服装だ
目が合う、というより
男はわたしをみていた
会釈をして、立ち去ろうとすると男は
歩き出し、私の前で立ち止まった
「君がキラだね」