鳥籠の中で飛翔せよ

 ぼーっとしたままで終わらせた、今日の任務。簡単だった。王都の人々を脅かす魔獣たちを刻んで、戦績として持ち帰る。ここ最近の戦闘は、何も考えないうちに終わってしまう。触手が勝手に動くのだ。何のつもりか、動かなくなった魔獣を刻んでいくこともあった。少しだけ、いやな予感がする。とにかく、そういうわけで戦うのに頭を使わなくなった。代わりに考えるのは、親友の最期と帝国のことだ。

 任務のないある日、あたしは行動を起こした。めったに行かない資料室の扉を叩く。ここには、今までギルドの諜報員たちが集めた記録や情報が詰まっている。リックさんの定位置でもある一室で、そのひとは本を片手に声をかけてくれた。
「アリサ、無理はしない約束のはずだ。記憶のことは追わなくてもいいんじゃなかったのかい?」
「違います。これは、今のあたしが――アリサ・クルーが望んでいることです」
 リックさんは本から目を逸らして、そっとあたしを見つめて言った。
「そう。なら口出しはしない。個人的な事情なら僕はどうこう言えないからね。ただ、情報の漏洩は規定違反だから、そこは気を付けて」
「はい。大丈夫です。ここで調べて知ったことは、あたしのためだけに使います」

 向かったのは、資料室の奥、各国の動向についてまとめてある場所だ。帝国の情報は多かった。この国が一番警戒している相手なのだから、当然といえば当然だ。膨大な資料を前に、あたしは座り込んだ。この中から、欲しい情報を見つけるのは至難の業だ。
 資料は古い方から並べられていて、かつ、これからのことに関わるものはひとまとめにされている。ただ、このところバタついていたらしく、書類の整理は行き届いていない。この中からタクトの手掛かりを探すのか……。
 一瞬あきらめかけたけれど、この散らかった資料室にも、数年の間で慣れている。とりあえず新しいものから、書類をまとめたファイルに手を伸ばした。――と、ひらり、足元に紙が落ちる。誰かのメモだろうか、なんとなく拾ってみると、それは。
「これ、」
 帝国軍の指揮者であるタクトがいつどこに現れるか、その予定表だった。
(まさか、あたしが知りたいことがこんな簡単に見つかるなんて)
 運命だと思った。あたしは誰かに背中を押されている。タクトに会って、その真意を確かめなければならない。手書きのメモに、そう言われているような気がした。
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