[0]序章
何かを失っていた。気がつくと、何か、とても大切なものを失っていた。何を失ったのかさえわからない。ただ、何よりも大切なものが、永遠に失われたのだ。喪失を主張するように、胸にあいた穴が痛む。埋めなければ。強くならねば。今度こそ、もう何も失くさぬように――。
何かが欠けたまま、旅人はあてもなく彷徨う。長い長い旅路を、ひとり孤独に。
楽園を求めて。
◆◇◆
かつて、突如として現れた「魔王」という存在が、この世界を脅かしていた。それが人間なのか、生物なのかもしくは単なる現象なのか。その正体を知る者はいない。だが、魔法の才を持つ者は皆、その強い力を感じ続けていた。人々を襲う魔物の源、魔王と名付けられた禍々しい力を。
その力を討つために、一体何人の戦士が犠牲になっただろうか。歴史が死者を数えることをやめた頃、同じ志を持ったある若者たちが旅立った。
そして、彼らにより魔王は封印された。魔物は絶え、平穏が戻ったのだ。魔王封印の中心であった男は、魔物のいなくなった世界の平穏を守るべく活動を続け、やがて「賢者」と称賛されるまでに至った。
魔王が封印されてから20年。人々がようやく平和に慣れた頃、それは起こった。魔王が蘇った気配も、封印が破られたという知らせもない。しかし、魔物は再び姿を現したのだ――。
◆◇◆
――お前の望みは何だ?
闇の中、静寂が問う。怯むことなく答える声が、まっすぐに響きわたる。
「オレは、一番大事なものを守りたいんだ。だから――」
誓いのように、少年は煌めく鍵を掴んだ。光が溢れ、彼の世界を覆い尽くす。すべてを塗りつぶし、攫っていく。
そして、扉が開かれるように、物語は始まった。
何かが欠けたまま、旅人はあてもなく彷徨う。長い長い旅路を、ひとり孤独に。
楽園を求めて。
◆◇◆
かつて、突如として現れた「魔王」という存在が、この世界を脅かしていた。それが人間なのか、生物なのかもしくは単なる現象なのか。その正体を知る者はいない。だが、魔法の才を持つ者は皆、その強い力を感じ続けていた。人々を襲う魔物の源、魔王と名付けられた禍々しい力を。
その力を討つために、一体何人の戦士が犠牲になっただろうか。歴史が死者を数えることをやめた頃、同じ志を持ったある若者たちが旅立った。
そして、彼らにより魔王は封印された。魔物は絶え、平穏が戻ったのだ。魔王封印の中心であった男は、魔物のいなくなった世界の平穏を守るべく活動を続け、やがて「賢者」と称賛されるまでに至った。
魔王が封印されてから20年。人々がようやく平和に慣れた頃、それは起こった。魔王が蘇った気配も、封印が破られたという知らせもない。しかし、魔物は再び姿を現したのだ――。
◆◇◆
――お前の望みは何だ?
闇の中、静寂が問う。怯むことなく答える声が、まっすぐに響きわたる。
「オレは、一番大事なものを守りたいんだ。だから――」
誓いのように、少年は煌めく鍵を掴んだ。光が溢れ、彼の世界を覆い尽くす。すべてを塗りつぶし、攫っていく。
そして、扉が開かれるように、物語は始まった。
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