wonderland code
バイアスだって十人十色 [6]学生(赤/白)
魔導師の談話室を飛び出してきて、学生たちが自由に使える共有スペースまで辿り着いた。ここも「談話室」と呼ばれているので、魔導師としては非常に不便だ。言い換えるなら、こっちが「みんなの談話室」だろうか。人間のほうが多いから。
レテはため息も尽きて、先ほどの課題を進めることにした。軽くメモをとっていた情報を、字にほどいてまとめていく。自慢のお菓子について語らうのに夢中だったせいか、ゼルの記録をとることを忘れていた。けれど問題はないだろう。
(アイツのことなんか目を閉じてでも書ける)
とペンを持ち直したとき、
「レテ。今、暇してるのか?」
金髪を結った男が声をかけてきた。同期で魔導師のレベッカだ。魔導師の方の談話室から、廊下を歩く彼をよく見かける。確かクラウツの選んだ「次世代候補」だったか。
レベッカは僕と比べると若者らしい――外見相応の人間と同じ年齢でありながら、色んなものに長けた魔導師だ。入学時期が似ていたり、講義や調べものが被ったりで、顔を合わせる頻度が高く。ましてや次世代候補という共通点までできて。まあ、学友というやつだ。
――ただ、レベッカは少なくとも試験で入学してはいない。彼には何か裏がありそうだけど、二人で雑に話すような状況の居心地はすこぶる良いので、レテはもう気にしないことにしている。だからよく合う魔導師として、よくいる友人という関係を作れているはずだ。程度でいうと、お互いの講義予定を大まかに把握しているくらい。
「……あれ、レベッカこの時間フリーだっけ?」
たしか、彼はこのくらいの時間帯に厳しい講義を取っているはずだ。何度もその愚痴を聞いたから覚えている。教授が受講者を全員把握しているから、出席代行も通用しない、とか。
「急に講義がなくなったんだよ。遅刻もしないあのクラウツが、直前に知らせてきた」
レベッカによると滅多にないことらしく、色々想像を巡らせているみたいだった。
「珍しいというか初めてかもしれねえ。部屋行っても会えなかったし、何かやったんだか」
「トリカブト味のマカロンでも食べたんじゃない?」
「なんだそりゃ」
なんて笑って、顔を上げる。課題文の進捗は――ここまで骨組みがまとまっているなら、後にしてもよさそうだ。
「講義ないなら、どっか行く? いまバザール限定のマカロンがね――」
せっかくだし、二人で話題の甘味を攫いにいこう。決まりの悪そうな返事をする学友と。そういう日常の中で、自分はわりと学生をやれていると思う。
と、自称してみたけど。学生として何をなせばいいかまではわかっていないから、レテは課題に勤しむのだ。講義の合間を縫って。限界まで粘って。
魔導師の談話室を飛び出してきて、学生たちが自由に使える共有スペースまで辿り着いた。ここも「談話室」と呼ばれているので、魔導師としては非常に不便だ。言い換えるなら、こっちが「みんなの談話室」だろうか。人間のほうが多いから。
レテはため息も尽きて、先ほどの課題を進めることにした。軽くメモをとっていた情報を、字にほどいてまとめていく。自慢のお菓子について語らうのに夢中だったせいか、ゼルの記録をとることを忘れていた。けれど問題はないだろう。
(アイツのことなんか目を閉じてでも書ける)
とペンを持ち直したとき、
「レテ。今、暇してるのか?」
金髪を結った男が声をかけてきた。同期で魔導師のレベッカだ。魔導師の方の談話室から、廊下を歩く彼をよく見かける。確かクラウツの選んだ「次世代候補」だったか。
レベッカは僕と比べると若者らしい――外見相応の人間と同じ年齢でありながら、色んなものに長けた魔導師だ。入学時期が似ていたり、講義や調べものが被ったりで、顔を合わせる頻度が高く。ましてや次世代候補という共通点までできて。まあ、学友というやつだ。
――ただ、レベッカは少なくとも試験で入学してはいない。彼には何か裏がありそうだけど、二人で雑に話すような状況の居心地はすこぶる良いので、レテはもう気にしないことにしている。だからよく合う魔導師として、よくいる友人という関係を作れているはずだ。程度でいうと、お互いの講義予定を大まかに把握しているくらい。
「……あれ、レベッカこの時間フリーだっけ?」
たしか、彼はこのくらいの時間帯に厳しい講義を取っているはずだ。何度もその愚痴を聞いたから覚えている。教授が受講者を全員把握しているから、出席代行も通用しない、とか。
「急に講義がなくなったんだよ。遅刻もしないあのクラウツが、直前に知らせてきた」
レベッカによると滅多にないことらしく、色々想像を巡らせているみたいだった。
「珍しいというか初めてかもしれねえ。部屋行っても会えなかったし、何かやったんだか」
「トリカブト味のマカロンでも食べたんじゃない?」
「なんだそりゃ」
なんて笑って、顔を上げる。課題文の進捗は――ここまで骨組みがまとまっているなら、後にしてもよさそうだ。
「講義ないなら、どっか行く? いまバザール限定のマカロンがね――」
せっかくだし、二人で話題の甘味を攫いにいこう。決まりの悪そうな返事をする学友と。そういう日常の中で、自分はわりと学生をやれていると思う。
と、自称してみたけど。学生として何をなせばいいかまではわかっていないから、レテは課題に勤しむのだ。講義の合間を縫って。限界まで粘って。