wonderland code
バイアスだって十人十色 [1] 学生(青/黒)
「レテくんにはいわゆる個人的な課題をあげようかな」
担当教授のキャロの一言によって、レテの予定が突然増えた。真昼である。学園での目的を果たしたあと、これから話題の甘味を攫いにいこうかと思っていたところだったのに。相手が相手でなければ舌打ちをしていたところだ。
レテはグラン・アカデミーの学生である。
グランという魔導師が創設したという、人間と魔導師の境目がほとんどない特別な学校だ。だからか、ちゃんとした学力、もしくは有力者の推薦でしか入学ができない。
レテは魔導師でありながら学科試験を受けて学力でアカデミーに入った。そして、様々な背景の者たちをなんとなく眺め、溢れてくる気持ちを研究や実験でなんとか消化していった結果、なぜかこの女に気に入られたのだ。
「僕だけに課題? 暇じゃないんだけど」
「じゃあ、きちんと提出したら期末が暇になるくらいの課題にしよう」
キャロと名乗る女魔導師にして、特別魔導教授のうちひとりだ。学校の運営側から認められた特殊な地位の人物。その役割は、「次世代魔導師の育成」であるらしい。表向きには。歴史を顧みると、まあ何かしらの裏があるのだろうけど。
レテはキャロにとって「次世代候補」らしい。うっかり特別に選ばれた、教授お気に入りの魔導師。感覚的には師弟関係に近く、教授ひとりに対して多くて三人くらいはいるようだった。
師であるキャロは、装飾されたマスクにポーカーフェイスという謎多き女であった。つぶらな瞳に長い睫毛のせいか素顔は美少女であるという噂もある。が、表情に乏しい目上の相手というのはレテの最も苦手なタイプであった。
教授としては歴史や地理を担当する魔導師が、レテに何を見出したのだろう。腕の立つ人形師としても、わかりやすい講義をする先生としても、人気者の彼女が。何をどうみたってひねくれている自分に何を求めて――、と、レテはそこで考えるのをやめた。
魔導師だろうが人間だろうが、教授のお気に入りであろうがそうでなかろうが、アカデミーの学生には共通して必要なものがある。
単位だ。
キャロはそれらをまるで人質のようにしてまで、わざわざやらせたい課題があるようだ。
「最終的には文章でまとめて提出。自分の言葉でまとめてくれたら、フォーマットは問わないよ」
課題内容はこうだ。
――複数の教授に同じ質問をして、その状況・返答と感想を記録、記述する。
どのような問いにするかはレテの判断に任されているらしい。試験ではなく、提出物の出来で評価が決まる課題だ。レテの苦手分野でもあった。
「質問ってなんでもいいの? キャロせんせに聞いても?」
不機嫌そうに肩をすくめて見る。片側だけの三つ編みが肩をさらっと撫でて、その感覚がもう既に面倒であった。
質問についてはすぐに思いついた。筆記用具をさっと取り出す。とりあえず会話をしてメモをとって、後で文章に起こすのがよさそうだ。というレテの打算を、キャロも一目でわかったようだった。
「そうだね。まず私からか」
「じゃあ」
目の前の魔導師に訊いてみるとしようか。
「初めてひとを殺したのはどんなときだった?」
「レテくんにはいわゆる個人的な課題をあげようかな」
担当教授のキャロの一言によって、レテの予定が突然増えた。真昼である。学園での目的を果たしたあと、これから話題の甘味を攫いにいこうかと思っていたところだったのに。相手が相手でなければ舌打ちをしていたところだ。
レテはグラン・アカデミーの学生である。
グランという魔導師が創設したという、人間と魔導師の境目がほとんどない特別な学校だ。だからか、ちゃんとした学力、もしくは有力者の推薦でしか入学ができない。
レテは魔導師でありながら学科試験を受けて学力でアカデミーに入った。そして、様々な背景の者たちをなんとなく眺め、溢れてくる気持ちを研究や実験でなんとか消化していった結果、なぜかこの女に気に入られたのだ。
「僕だけに課題? 暇じゃないんだけど」
「じゃあ、きちんと提出したら期末が暇になるくらいの課題にしよう」
キャロと名乗る女魔導師にして、特別魔導教授のうちひとりだ。学校の運営側から認められた特殊な地位の人物。その役割は、「次世代魔導師の育成」であるらしい。表向きには。歴史を顧みると、まあ何かしらの裏があるのだろうけど。
レテはキャロにとって「次世代候補」らしい。うっかり特別に選ばれた、教授お気に入りの魔導師。感覚的には師弟関係に近く、教授ひとりに対して多くて三人くらいはいるようだった。
師であるキャロは、装飾されたマスクにポーカーフェイスという謎多き女であった。つぶらな瞳に長い睫毛のせいか素顔は美少女であるという噂もある。が、表情に乏しい目上の相手というのはレテの最も苦手なタイプであった。
教授としては歴史や地理を担当する魔導師が、レテに何を見出したのだろう。腕の立つ人形師としても、わかりやすい講義をする先生としても、人気者の彼女が。何をどうみたってひねくれている自分に何を求めて――、と、レテはそこで考えるのをやめた。
魔導師だろうが人間だろうが、教授のお気に入りであろうがそうでなかろうが、アカデミーの学生には共通して必要なものがある。
単位だ。
キャロはそれらをまるで人質のようにしてまで、わざわざやらせたい課題があるようだ。
「最終的には文章でまとめて提出。自分の言葉でまとめてくれたら、フォーマットは問わないよ」
課題内容はこうだ。
――複数の教授に同じ質問をして、その状況・返答と感想を記録、記述する。
どのような問いにするかはレテの判断に任されているらしい。試験ではなく、提出物の出来で評価が決まる課題だ。レテの苦手分野でもあった。
「質問ってなんでもいいの? キャロせんせに聞いても?」
不機嫌そうに肩をすくめて見る。片側だけの三つ編みが肩をさらっと撫でて、その感覚がもう既に面倒であった。
質問についてはすぐに思いついた。筆記用具をさっと取り出す。とりあえず会話をしてメモをとって、後で文章に起こすのがよさそうだ。というレテの打算を、キャロも一目でわかったようだった。
「そうだね。まず私からか」
「じゃあ」
目の前の魔導師に訊いてみるとしようか。
「初めてひとを殺したのはどんなときだった?」