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第14話 色々とキャパオーバー!温泉旅行!前編
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その夜、お宿で夕食を食べ終えた私たちは、お茶を飲みながらまったりしていると、ぬいぐるみ姿のケロちゃんが思い出したあのように声をあげた。
「そうや!地と炎のカードが揃ったっちゅーことは、わい、今真の姿に戻れるっちゅーことや!」
「え、ケロちゃんの真の姿?」
「せや!ちょっと見とき!」
ケロちゃんの真の姿と言われてもピンとこない私は、ケロちゃんの羽が人1人が覆い隠せるくらいの大きさまで伸び、その小さな体を覆い尽くす様をぼけーっと見ていた。
合わさった両翼の隙間からは光が漏れている。眩しくて目がクラクラしそうだった。
その羽が再び開くと、毛並みが金色に輝く獅子が姿を現した。
旅館の少し広い部屋に、この翼の生えた獅子の巨体と、その後ろの純和風の障子はミスマッチすぎて異様だ。
「なまえ、なんやその顔、もっと『ケロちゃんかっこえー!』とか言ってくれへんの?」
畳に降り立った獅子は、いつものケロちゃんの関西弁で、しかしいつもより何倍も低い声で不満を表した。
なに、その声、いつものケロちゃんじゃないみたい!でも、でも・・・
「かわいー!!!!」
そう言って私は大きくなったケロちゃんに抱きついた。
このサラサラの毛並み!大きな脚と肉球!キリッとした琥珀のようなきれいな瞳!
ネコ科大好きな私の小さい頃の夢はピューマを飼うことだった。
抱きついてふわふわの胸毛に顔を埋める。
「ふわふわー!もーケロちゃんこんな可愛くなるなら早く言ってくれればよかったのにー!!」
「わいは可愛いやのぅて、かっこええんやー!」
「もふもふさせてー!」
ケロちゃんの胸毛に顔を埋めてそのふわふわを堪能していると、急に後ろへと引っ張られた。
目の前の魅惑のもふもふから急に離され、私の至福のときを邪魔するのは一体誰かと腕が伸びて来た方向を見ると、
眉間に皺を寄せたユエさんだった。
「・・・」
「・・あの、、ユエさん・・?」
「・・・」
私の腕を掴んだまま無言で視線を外される。ユエさんの眉間の皺が一層深くなった。
何か言いたいことがあるのかとおずおずと様子を伺うが、一向に私とは目を合わせてくれない。
沈黙に耐えきれなくて、すぐ隣のケロちゃんに話しかける。
「そ、そういえば、ユエさんの本来の姿、初めて会った時以来見てないんだけど、もう一回見て見たいなー・・なんて」
「せや、せっかく4大元素カードがもどってきたことやし、も強くなって来たと思うから、
ちょっとくらいなら魔力の受け渡しもできるんとちゃうか?そしたら本来の姿も維持できるやろ」
「魔力の受け渡し・・・?」
「せや、が仮の主になる前は、さくらの残していった魔力を源にしていたから、何の不自由もしとらんかったけど」
「けど・・・?」
「今は仮でも契約上はが主や。魔力はの力を源にしている」
「でも、私、魔力あげたことない・・・?よね?」
「あぁ、今の主ではカードを使うことと、私たちの存在を維持するだけで精一杯だ」
「それで2人は大丈夫なの?魔力が足りてないってことはないの?」
「わいのシンボルは太陽(サン)。自分で輝けるし、省エネのぬいぐるみや春人の姿でいるなら、いつものご飯で足りてることは足りてる。」
「え、それじゃあ、ユエさんは・・・?」
ユエさんの方を見ると、彼は少し間をおいて口を開いた。
「この仮の姿でいるなら、存在は維持できる。・・が、本来の姿に戻れるほど魔力は足りていない」
そう言ったユエさんの瞳は苦しげだった。
「月は誰かの光を反射して光るもんやし、誰かの魔力をあてにするしかない。
やっぱり前の雪うさぎの時みたいに、バカ喰いしても維持はできんか。ユエは少食で偏食やしなー」
「そんな!魔力足りてないんじゃ、体辛いんじゃない?!大丈夫なの?!」
学校とカードを捕まえることでいっぱいいっぱいになっていた自分が恥ずかしい。
それなのに、温泉だなんだと浮かれてバカみたいだ。もっとちゃんと考えなきゃいけないことはちゃんとあったのに、
何かできることはないのかと、慌ててカバンに入れっぱなしのさくらカードと杖を取り出そうと立ち上がる。
「待て待て、さっき言うたやろ、なまえの魔力もだんだん強なって来たし、そろそろ魔力の受け渡ししてもええんとちゃうかって」
「そ、そっか、え、で、その魔力の受け渡しってどうやるの?専用の呪文とかあるの?」
「せや、説明するより実際にユエにやってもらえばええねん」
「え、ユエさんが魔法使うの?あげる側がなんかするものじゃないの・・?」
勢い余って立ち上がっていた私は、ケロちゃんの言葉で一旦落ち着きを取り戻し、ユエさんが座っている横に移動する。
「ごめんなさい、ユエさんが魔力足りないって知らなくて・・」
「お前がカードを使うだけで精一杯なのはわかってる。無理はするな」
「ありがとう。でも私、ユエさんが1人で辛いのは嫌なの。貴方のために何かしたい。私の魔力、もらって?」
ユエさんの優しい手が私の頭を撫でる。さっきまで焦って自己嫌悪になっていた心をそっと凪いでいく。安心する。
「いいのか・・?」
「うん。大丈夫!最近は体力もついてきたし、どーんともらって!」
そう言ったはいいが、そういえば魔力ってどうやって受け渡すんだろう?
手から元気玉みたいなのが出るんだろうか?と自分の手を見つめていると、その手をユエさんに掴まれた。
顔を上げると、ユエさんの顔が間近にあって、手を掴んでいる方とは反対の手が顎に掛けられて上を向かせられる。
紫がかった銀色の瞳が目の前に迫る。
顔が近くて頬に熱が集まるのを感じる。
ユエさんの形のきれいな薄い唇が私の首筋へと近づいてくる。
サラサラとした髪が頬に当たってくすぐったいなと思っていると、首元から聞きなれないチュッという音と、チクリとした痛みが走った。
次の瞬間、背中を羽でなでられたような、ぞくりとした感覚が走った。
何かが私の中を駆け巡って首筋から抜けていく感覚。
体温が上がっているようにも感じるし、背筋がヒヤリともする不思議な感覚。
身体から力が抜けて後ろに倒れそうになった時、私の腕を掴んでいた手が腰に回り、身体が密着するように抱きしめられた。
反射的に瞼を閉じた暗転した世界で、ユエさんの鼓動が近いのを感じる。その鼓動に安心する。
首筋に感じていた温もりが離れていった感触がして、閉じていた目を開けた。
体の力が抜けてしまった私は、ユエさんに静かに座布団の上に座らされ壁にもたれかかった。
長い夢を見た後、夢と現実の境が分からなくなるあの感覚に似た気分を味わっているようだった。
アレはなんだったんだろう。
まだぼんやりとした感覚の中、ふと壁にかけてあった鏡を見ると、先ほどチクリと小さな痛みを感じたあたりに赤いアザができているのが見えた。
未だ力の入らない体をズルズルと引きずりながら鏡に近づき、自分の首に見えるそれをまじまじと見る。
「・・な、なに、こ・・れ!?」
「なにそれー!魔力をそこから受け渡ししたら、そんなアザついちゃうのー?えっちー!」
さっきまでおとなしく成り行きを見ていた飛香が、後ろから抱きついてきて、
私の首についたキスマークをまじまじと見つめる。飛鳥、重い・・。
さっきしたチュって音はこれだったのかーー!!と恥ずかしさで叫びたかったが、力の入らない体では熱くなる頰を覆って床に転がってうずくまる事しかできなかった。
キ、キスマークなんて初めてみた私は、さっきまでの事を妙に客観的に頭に思い浮かべてしまい、恥ずかしさで一気に顔が熱くなる。
私の経験値の少ない頭は恥ずかしさと状況が飲み込めず処理負荷となってしまい、そこで意識を手放してしまった。
「ありゃ、なまえちゃんにはキャパオーバーだったー?」
「まー、突然魔力を受け渡しなんかしたら、そらぶっ倒れるわな。寝かしとこか」
「加減はした、つもりだ」
「せやかて、これはもらいすぎやって」
「・・・すまない、なまえ」
遠い意識の中で感じた額に触れた手が、ひんやりと火照った頰にとても心地よかった。
「それにしても、あんなことしなくたって魔力はもらえるでしょ。僕への牽制?」
「なんのことだ?」
「無意識の行動?それとも気づかないふり?」
「さっきからお前は何を言っている」
「本気で気付いてないのなら、重症ね」
温泉編 後編へ続くーーー
※長らく更新が途絶えてまして、申し訳ないです・・・!(長くなるので前編後編へ分けました。)
※本作における、「魔力の受け渡し」は、完全に捏造です。
ちなみに、原作で桃矢お兄ちゃんがユエに魔力を渡した時のように、渡した魔力がなくなってしまうようなものではなく、
しばらく経つと渡して減った魔力は元どおり&主は元気になります。渡した後は、ちょっと怠くなったりいつもよりもお腹は空くけど、一過性のものです。
言い換えれば、なまえさんはユエさんのご飯となりました(笑)
「そうや!地と炎のカードが揃ったっちゅーことは、わい、今真の姿に戻れるっちゅーことや!」
「え、ケロちゃんの真の姿?」
「せや!ちょっと見とき!」
ケロちゃんの真の姿と言われてもピンとこない私は、ケロちゃんの羽が人1人が覆い隠せるくらいの大きさまで伸び、その小さな体を覆い尽くす様をぼけーっと見ていた。
合わさった両翼の隙間からは光が漏れている。眩しくて目がクラクラしそうだった。
その羽が再び開くと、毛並みが金色に輝く獅子が姿を現した。
旅館の少し広い部屋に、この翼の生えた獅子の巨体と、その後ろの純和風の障子はミスマッチすぎて異様だ。
「なまえ、なんやその顔、もっと『ケロちゃんかっこえー!』とか言ってくれへんの?」
畳に降り立った獅子は、いつものケロちゃんの関西弁で、しかしいつもより何倍も低い声で不満を表した。
なに、その声、いつものケロちゃんじゃないみたい!でも、でも・・・
「かわいー!!!!」
そう言って私は大きくなったケロちゃんに抱きついた。
このサラサラの毛並み!大きな脚と肉球!キリッとした琥珀のようなきれいな瞳!
ネコ科大好きな私の小さい頃の夢はピューマを飼うことだった。
抱きついてふわふわの胸毛に顔を埋める。
「ふわふわー!もーケロちゃんこんな可愛くなるなら早く言ってくれればよかったのにー!!」
「わいは可愛いやのぅて、かっこええんやー!」
「もふもふさせてー!」
ケロちゃんの胸毛に顔を埋めてそのふわふわを堪能していると、急に後ろへと引っ張られた。
目の前の魅惑のもふもふから急に離され、私の至福のときを邪魔するのは一体誰かと腕が伸びて来た方向を見ると、
眉間に皺を寄せたユエさんだった。
「・・・」
「・・あの、、ユエさん・・?」
「・・・」
私の腕を掴んだまま無言で視線を外される。ユエさんの眉間の皺が一層深くなった。
何か言いたいことがあるのかとおずおずと様子を伺うが、一向に私とは目を合わせてくれない。
沈黙に耐えきれなくて、すぐ隣のケロちゃんに話しかける。
「そ、そういえば、ユエさんの本来の姿、初めて会った時以来見てないんだけど、もう一回見て見たいなー・・なんて」
「せや、せっかく4大元素カードがもどってきたことやし、も強くなって来たと思うから、
ちょっとくらいなら魔力の受け渡しもできるんとちゃうか?そしたら本来の姿も維持できるやろ」
「魔力の受け渡し・・・?」
「せや、が仮の主になる前は、さくらの残していった魔力を源にしていたから、何の不自由もしとらんかったけど」
「けど・・・?」
「今は仮でも契約上はが主や。魔力はの力を源にしている」
「でも、私、魔力あげたことない・・・?よね?」
「あぁ、今の主ではカードを使うことと、私たちの存在を維持するだけで精一杯だ」
「それで2人は大丈夫なの?魔力が足りてないってことはないの?」
「わいのシンボルは太陽(サン)。自分で輝けるし、省エネのぬいぐるみや春人の姿でいるなら、いつものご飯で足りてることは足りてる。」
「え、それじゃあ、ユエさんは・・・?」
ユエさんの方を見ると、彼は少し間をおいて口を開いた。
「この仮の姿でいるなら、存在は維持できる。・・が、本来の姿に戻れるほど魔力は足りていない」
そう言ったユエさんの瞳は苦しげだった。
「月は誰かの光を反射して光るもんやし、誰かの魔力をあてにするしかない。
やっぱり前の雪うさぎの時みたいに、バカ喰いしても維持はできんか。ユエは少食で偏食やしなー」
「そんな!魔力足りてないんじゃ、体辛いんじゃない?!大丈夫なの?!」
学校とカードを捕まえることでいっぱいいっぱいになっていた自分が恥ずかしい。
それなのに、温泉だなんだと浮かれてバカみたいだ。もっとちゃんと考えなきゃいけないことはちゃんとあったのに、
何かできることはないのかと、慌ててカバンに入れっぱなしのさくらカードと杖を取り出そうと立ち上がる。
「待て待て、さっき言うたやろ、なまえの魔力もだんだん強なって来たし、そろそろ魔力の受け渡ししてもええんとちゃうかって」
「そ、そっか、え、で、その魔力の受け渡しってどうやるの?専用の呪文とかあるの?」
「せや、説明するより実際にユエにやってもらえばええねん」
「え、ユエさんが魔法使うの?あげる側がなんかするものじゃないの・・?」
勢い余って立ち上がっていた私は、ケロちゃんの言葉で一旦落ち着きを取り戻し、ユエさんが座っている横に移動する。
「ごめんなさい、ユエさんが魔力足りないって知らなくて・・」
「お前がカードを使うだけで精一杯なのはわかってる。無理はするな」
「ありがとう。でも私、ユエさんが1人で辛いのは嫌なの。貴方のために何かしたい。私の魔力、もらって?」
ユエさんの優しい手が私の頭を撫でる。さっきまで焦って自己嫌悪になっていた心をそっと凪いでいく。安心する。
「いいのか・・?」
「うん。大丈夫!最近は体力もついてきたし、どーんともらって!」
そう言ったはいいが、そういえば魔力ってどうやって受け渡すんだろう?
手から元気玉みたいなのが出るんだろうか?と自分の手を見つめていると、その手をユエさんに掴まれた。
顔を上げると、ユエさんの顔が間近にあって、手を掴んでいる方とは反対の手が顎に掛けられて上を向かせられる。
紫がかった銀色の瞳が目の前に迫る。
顔が近くて頬に熱が集まるのを感じる。
ユエさんの形のきれいな薄い唇が私の首筋へと近づいてくる。
サラサラとした髪が頬に当たってくすぐったいなと思っていると、首元から聞きなれないチュッという音と、チクリとした痛みが走った。
次の瞬間、背中を羽でなでられたような、ぞくりとした感覚が走った。
何かが私の中を駆け巡って首筋から抜けていく感覚。
体温が上がっているようにも感じるし、背筋がヒヤリともする不思議な感覚。
身体から力が抜けて後ろに倒れそうになった時、私の腕を掴んでいた手が腰に回り、身体が密着するように抱きしめられた。
反射的に瞼を閉じた暗転した世界で、ユエさんの鼓動が近いのを感じる。その鼓動に安心する。
首筋に感じていた温もりが離れていった感触がして、閉じていた目を開けた。
体の力が抜けてしまった私は、ユエさんに静かに座布団の上に座らされ壁にもたれかかった。
長い夢を見た後、夢と現実の境が分からなくなるあの感覚に似た気分を味わっているようだった。
アレはなんだったんだろう。
まだぼんやりとした感覚の中、ふと壁にかけてあった鏡を見ると、先ほどチクリと小さな痛みを感じたあたりに赤いアザができているのが見えた。
未だ力の入らない体をズルズルと引きずりながら鏡に近づき、自分の首に見えるそれをまじまじと見る。
「・・な、なに、こ・・れ!?」
「なにそれー!魔力をそこから受け渡ししたら、そんなアザついちゃうのー?えっちー!」
さっきまでおとなしく成り行きを見ていた飛香が、後ろから抱きついてきて、
私の首についたキスマークをまじまじと見つめる。飛鳥、重い・・。
さっきしたチュって音はこれだったのかーー!!と恥ずかしさで叫びたかったが、力の入らない体では熱くなる頰を覆って床に転がってうずくまる事しかできなかった。
キ、キスマークなんて初めてみた私は、さっきまでの事を妙に客観的に頭に思い浮かべてしまい、恥ずかしさで一気に顔が熱くなる。
私の経験値の少ない頭は恥ずかしさと状況が飲み込めず処理負荷となってしまい、そこで意識を手放してしまった。
「ありゃ、なまえちゃんにはキャパオーバーだったー?」
「まー、突然魔力を受け渡しなんかしたら、そらぶっ倒れるわな。寝かしとこか」
「加減はした、つもりだ」
「せやかて、これはもらいすぎやって」
「・・・すまない、なまえ」
遠い意識の中で感じた額に触れた手が、ひんやりと火照った頰にとても心地よかった。
「それにしても、あんなことしなくたって魔力はもらえるでしょ。僕への牽制?」
「なんのことだ?」
「無意識の行動?それとも気づかないふり?」
「さっきからお前は何を言っている」
「本気で気付いてないのなら、重症ね」
温泉編 後編へ続くーーー
※長らく更新が途絶えてまして、申し訳ないです・・・!(長くなるので前編後編へ分けました。)
※本作における、「魔力の受け渡し」は、完全に捏造です。
ちなみに、原作で桃矢お兄ちゃんがユエに魔力を渡した時のように、渡した魔力がなくなってしまうようなものではなく、
しばらく経つと渡して減った魔力は元どおり&主は元気になります。渡した後は、ちょっと怠くなったりいつもよりもお腹は空くけど、一過性のものです。
言い換えれば、なまえさんはユエさんのご飯となりました(笑)