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第9話 ユエさんの好きな食べ物の話
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とある週末の朝のこと。いつも気になっていたけど、聞けなかった質問をユエさんに投げかけてみた。
「ユエさん、以前はご飯食べられなかったって聞いたけど、今は仮の姿の時は食べられるようになったんだよね?」
「あぁ、この姿の時は食事は取れる」
「それじゃ、ユエさんの好きな食べ物って何?」
「・・・・「わいはプリンやー!!!」
「ケロちゃんには聞いてなーい」
「そんなーなまえ様、わいの大好きなプリン作ったってやー」
「今日はユエさんの好きなご飯作って上げるのー」
「なんでそんなユエばっかみんな甘やかすんやー」
「ケロちゃんには昨日モダン焼き作って上げたでしょー」
「甘いもんもたーべーたーいー」
ユエさんは以前「雪兎さん」という方が仮の姿で、本来の姿のユエさんとは別人格とちょっと複雑な仕組み?だったらしい。
初めて聞かされた時、理解が追いつくまでに何回も聞き返してユエさんに鬱陶しがられたのも記憶に新しい。
ならばたまにはユエさんの好きな食べ物でも夕飯に作ってあげようかと単刀直入に聞いて見たのだが、ケロちゃんに横槍されて話が前に進まない。
昨夜のご飯にモダン焼きを作ってあげたばかりだというのに、調子にのってプリン食べたいとか言い出してる。
プリンは作るの意外と手間かかるんだぞ。
「まぁ、ゆきうさぎがやっていたように、仮の姿で食事もできるようになったし、ユエも楽しみも増えたやろ」
「雪兎さんはご飯は食べられたの?」
「あぁ、雪兎がご飯をぎょーさん食べてとったなー。ほんまによく食うやつやった」
「ほんまに」を相当強調して話すケロちゃんによると、なんでも紙袋いっぱいのパンを学校の昼食中に全部食べ切ったり、お弁当は毎回重箱2段だったりと普通の高校生の3倍は食べていたらしい。信じられない。
ユエさんは仮の姿も本来の姿もガッチリとした体型ではないし、そんなにたくさん食べているところはまだ見たことがない。
朝もコーヒーは飲んでるけど、それ以外食べているところはあまり目にしない。
「ユエは今まで食べてなかった分、偏食やから大変やでー」
「・・好きなものが少ないだけだ」
「ユエ!今は思う存分食べれるのを楽しまな人生損やで!わいはぬいぐるみの姿の時はできなかった食べ歩きができるのが幸せやー!!」
ケロちゃんはぬいぐるみの姿でダイニングテーブルに仁王立ちし、「あそこの飯屋がうまい」とか、「近くの商店街のコロッケが絶品だ」とかテンション高めに語り出した。
それを聞いていたなまえは空腹を覚え、そういえばまだ朝食をとっていなかったことを思い出した。
「あ、ちょうどホットケーキミックスがあったから、ホットケーキ作ろうかな。2人とも作ったら食べる?」
「食べるー!!!!!」
「・・・・・い、いらない」
ハイテンションのケロちゃんを煩わしそうに一瞥し、顔を背けてユエさんは朝は食べないと断りを入れた。
「ユエさん、そんなこと言わずに、ね。折角の週末だし、一緒に食べましょ?
朝ごはんというよりブランチの時間だけど・・。生クリームとイチゴとバナナもトッピングつけちゃう!」
腕まくりをし、意気込んで語る私に一瞥をくれたが、立ち上がってリビングのソファに座って本を読み始めてしまった。
甘いもの、苦手だったかな?でもあの反応は・・・と考えて、椅子にかけていたエプロンを付けた。
出来上がった2段重ねのホットケーキに生クリームと新鮮なイチゴとバナナをトッピングし、さらにお供にコーヒーを入れた。甘いものを食べるときはコーヒーに限る。
2皿分持ってダイニングに持って行くと、ケロちゃんはぬいぐるみの姿のまま自分の体と同じくらいの大きさのフォークを抱えて食べ始めた。
「ケロちゃん、食べづらくない?人間の姿になりなよ」
「何ゆうとるんや、この姿やとホットケーキが3倍の大きさになるんやー!気分的にお得なんや」
「何それ・・ホットケーキの大きさは変わらないでしょー、テーブルの上に乗らないで人の姿で食べなさいよー」
「んー!うまーい!」
テーブルの上に乗って体の大きさとさほど変わらないフォークを器用に使いこなし、ホットケーキを頬張るケロちゃんにお行儀が悪いと注意していると、ふとリビングから視線を感じた。
てっきり本に集中していると思ったユエさんが開いた本の上から目だけを出してこちらをじーっと見ている。心持ちちょっと目が懇願しているような、なんというか、小さい子供がお菓子を買ってと親に言えずに唇を噛んでいるようなそんなように見えた。
「ユエさん、コーヒー飲みたい?」
「・・・・」
少し遠くにいるユエさんに優しく聞いて見る。彼は本で顔下半分を隠して、フルフルと静かに首を振る。
「・・・小腹空いたなら、冷蔵庫にヨーグルトとフルーツあるけど・・・」
「・・・・」
またも静かにフルフルと静かに首を振る。
しばらくじっと見つめられていたが、ユエさんは静かに立ち上がってダイニングテーブルに歩み寄ってくる。
そして私を見下ろす。正確には私の手元をじっと見つめてくる。
「もしかして、ホットケーキ?」
「・・・(コク)」
ユエさんは私の手元を見て静かに頷いた。
ちょうどフォークに刺していた一口サイズのパンケーキにイチゴを追加で刺してユエさんの顔の前へ差し出すと、心なしかちょっと目が輝いた気がする。そのままパクリと私の手からパンケーキを食べた。
まだまだ仏頂面で眉間に皺は少し寄ってるし、ほんの些細な表情の変化だけど、私にはユエさんの目が煌めいているように見えた。
その様子がなんだか可愛くて、クスリと笑みがこぼれた。
「ユエさん、実はもう一皿分焼いたんです。まだクリームとか乗っけてないけど、トッピング乗せて一緒に食べませんか?ちょうどコーヒーも入れ直しましたし」
「・・・(コク)」
早く言えばいいのに、といつものツンツンユエさんからは想像できない何とも可愛いその様子に小さく嘆息し、キッチンへと足を向けた。
生クリームとイチゴとバナナを綺麗に盛り付け、カトラリーと一緒にユエさんの前に置く。(ケロちゃんよりクリーム多めにしてあげたのは内緒。)
無言で黙々と食べているが、いつもはさっと食べてしまうご飯も、ホットケーキを食べているときは、咀嚼の時間が長い気がする。
あぁ、そういえば少し前にチーズケーキを焼いた時もやけにゆっくり食べているなと思い出した。まさかユエさんが甘党だったとは、と正直驚いた。
「ねぇ、さっきの質問。ユエさんの好きな食べ物って甘いもの?」
「・・・あぁ、特にホットケーキが・・・気に入ってる」
「なんでか理由聞いてもいい?」
「・・・・桃矢が・・」
「トーヤ?」
「前の主の兄が・・・よく作ってくれて・・」
「それで大好きになったのね。ホットケーキ」
「だっ・・だいすき・・と言うわけでも・・・。ない」
そう言って懐かしそうに、そして美味しそうにパンケーキを食べるユエさんの頬はほんのりピンクで、こんどは私の頬がほころんだ。
「なまえ!食べへんなら、クリームいただき!」
「あー!ケロちゃん、私まだ食べてるでしょー!」
「よそ見してる方が悪いんやー」
「何よ食いしん坊!太っても知らないんだから!」
「なんやてー!なまえもクリームなんか食べとったら、すぐ太ってまうで!」
「うるさーい!」
慌ただしくも穏やかに我が家の時は流れて行く。
「ユエさん、以前はご飯食べられなかったって聞いたけど、今は仮の姿の時は食べられるようになったんだよね?」
「あぁ、この姿の時は食事は取れる」
「それじゃ、ユエさんの好きな食べ物って何?」
「・・・・「わいはプリンやー!!!」
「ケロちゃんには聞いてなーい」
「そんなーなまえ様、わいの大好きなプリン作ったってやー」
「今日はユエさんの好きなご飯作って上げるのー」
「なんでそんなユエばっかみんな甘やかすんやー」
「ケロちゃんには昨日モダン焼き作って上げたでしょー」
「甘いもんもたーべーたーいー」
ユエさんは以前「雪兎さん」という方が仮の姿で、本来の姿のユエさんとは別人格とちょっと複雑な仕組み?だったらしい。
初めて聞かされた時、理解が追いつくまでに何回も聞き返してユエさんに鬱陶しがられたのも記憶に新しい。
ならばたまにはユエさんの好きな食べ物でも夕飯に作ってあげようかと単刀直入に聞いて見たのだが、ケロちゃんに横槍されて話が前に進まない。
昨夜のご飯にモダン焼きを作ってあげたばかりだというのに、調子にのってプリン食べたいとか言い出してる。
プリンは作るの意外と手間かかるんだぞ。
「まぁ、ゆきうさぎがやっていたように、仮の姿で食事もできるようになったし、ユエも楽しみも増えたやろ」
「雪兎さんはご飯は食べられたの?」
「あぁ、雪兎がご飯をぎょーさん食べてとったなー。ほんまによく食うやつやった」
「ほんまに」を相当強調して話すケロちゃんによると、なんでも紙袋いっぱいのパンを学校の昼食中に全部食べ切ったり、お弁当は毎回重箱2段だったりと普通の高校生の3倍は食べていたらしい。信じられない。
ユエさんは仮の姿も本来の姿もガッチリとした体型ではないし、そんなにたくさん食べているところはまだ見たことがない。
朝もコーヒーは飲んでるけど、それ以外食べているところはあまり目にしない。
「ユエは今まで食べてなかった分、偏食やから大変やでー」
「・・好きなものが少ないだけだ」
「ユエ!今は思う存分食べれるのを楽しまな人生損やで!わいはぬいぐるみの姿の時はできなかった食べ歩きができるのが幸せやー!!」
ケロちゃんはぬいぐるみの姿でダイニングテーブルに仁王立ちし、「あそこの飯屋がうまい」とか、「近くの商店街のコロッケが絶品だ」とかテンション高めに語り出した。
それを聞いていたなまえは空腹を覚え、そういえばまだ朝食をとっていなかったことを思い出した。
「あ、ちょうどホットケーキミックスがあったから、ホットケーキ作ろうかな。2人とも作ったら食べる?」
「食べるー!!!!!」
「・・・・・い、いらない」
ハイテンションのケロちゃんを煩わしそうに一瞥し、顔を背けてユエさんは朝は食べないと断りを入れた。
「ユエさん、そんなこと言わずに、ね。折角の週末だし、一緒に食べましょ?
朝ごはんというよりブランチの時間だけど・・。生クリームとイチゴとバナナもトッピングつけちゃう!」
腕まくりをし、意気込んで語る私に一瞥をくれたが、立ち上がってリビングのソファに座って本を読み始めてしまった。
甘いもの、苦手だったかな?でもあの反応は・・・と考えて、椅子にかけていたエプロンを付けた。
出来上がった2段重ねのホットケーキに生クリームと新鮮なイチゴとバナナをトッピングし、さらにお供にコーヒーを入れた。甘いものを食べるときはコーヒーに限る。
2皿分持ってダイニングに持って行くと、ケロちゃんはぬいぐるみの姿のまま自分の体と同じくらいの大きさのフォークを抱えて食べ始めた。
「ケロちゃん、食べづらくない?人間の姿になりなよ」
「何ゆうとるんや、この姿やとホットケーキが3倍の大きさになるんやー!気分的にお得なんや」
「何それ・・ホットケーキの大きさは変わらないでしょー、テーブルの上に乗らないで人の姿で食べなさいよー」
「んー!うまーい!」
テーブルの上に乗って体の大きさとさほど変わらないフォークを器用に使いこなし、ホットケーキを頬張るケロちゃんにお行儀が悪いと注意していると、ふとリビングから視線を感じた。
てっきり本に集中していると思ったユエさんが開いた本の上から目だけを出してこちらをじーっと見ている。心持ちちょっと目が懇願しているような、なんというか、小さい子供がお菓子を買ってと親に言えずに唇を噛んでいるようなそんなように見えた。
「ユエさん、コーヒー飲みたい?」
「・・・・」
少し遠くにいるユエさんに優しく聞いて見る。彼は本で顔下半分を隠して、フルフルと静かに首を振る。
「・・・小腹空いたなら、冷蔵庫にヨーグルトとフルーツあるけど・・・」
「・・・・」
またも静かにフルフルと静かに首を振る。
しばらくじっと見つめられていたが、ユエさんは静かに立ち上がってダイニングテーブルに歩み寄ってくる。
そして私を見下ろす。正確には私の手元をじっと見つめてくる。
「もしかして、ホットケーキ?」
「・・・(コク)」
ユエさんは私の手元を見て静かに頷いた。
ちょうどフォークに刺していた一口サイズのパンケーキにイチゴを追加で刺してユエさんの顔の前へ差し出すと、心なしかちょっと目が輝いた気がする。そのままパクリと私の手からパンケーキを食べた。
まだまだ仏頂面で眉間に皺は少し寄ってるし、ほんの些細な表情の変化だけど、私にはユエさんの目が煌めいているように見えた。
その様子がなんだか可愛くて、クスリと笑みがこぼれた。
「ユエさん、実はもう一皿分焼いたんです。まだクリームとか乗っけてないけど、トッピング乗せて一緒に食べませんか?ちょうどコーヒーも入れ直しましたし」
「・・・(コク)」
早く言えばいいのに、といつものツンツンユエさんからは想像できない何とも可愛いその様子に小さく嘆息し、キッチンへと足を向けた。
生クリームとイチゴとバナナを綺麗に盛り付け、カトラリーと一緒にユエさんの前に置く。(ケロちゃんよりクリーム多めにしてあげたのは内緒。)
無言で黙々と食べているが、いつもはさっと食べてしまうご飯も、ホットケーキを食べているときは、咀嚼の時間が長い気がする。
あぁ、そういえば少し前にチーズケーキを焼いた時もやけにゆっくり食べているなと思い出した。まさかユエさんが甘党だったとは、と正直驚いた。
「ねぇ、さっきの質問。ユエさんの好きな食べ物って甘いもの?」
「・・・あぁ、特にホットケーキが・・・気に入ってる」
「なんでか理由聞いてもいい?」
「・・・・桃矢が・・」
「トーヤ?」
「前の主の兄が・・・よく作ってくれて・・」
「それで大好きになったのね。ホットケーキ」
「だっ・・だいすき・・と言うわけでも・・・。ない」
そう言って懐かしそうに、そして美味しそうにパンケーキを食べるユエさんの頬はほんのりピンクで、こんどは私の頬がほころんだ。
「なまえ!食べへんなら、クリームいただき!」
「あー!ケロちゃん、私まだ食べてるでしょー!」
「よそ見してる方が悪いんやー」
「何よ食いしん坊!太っても知らないんだから!」
「なんやてー!なまえもクリームなんか食べとったら、すぐ太ってまうで!」
「うるさーい!」
慌ただしくも穏やかに我が家の時は流れて行く。