背中越しのぬくもり
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
旅の途中で立ち寄ったホテルは、思っていたよりずっと狭かった。
長い移動の疲れを抱えながら部屋の扉を開けた瞬間、なまえは足を止める。
「……あれ?」
後ろから入ってきたポルナレフも同じように固まった。
部屋の中央。
そこにあったのは、セミダブルほどの大きさしかないベッドが一つ。
それだけだった。
「マジかよ……」
ポルナレフが頭を抱える。
「ベッド、一つしかないじゃあねぇか」
「他に空いてる部屋は?」
「埋まってるって言ってただろ」
言われてみればその通りだった。
観光客が多い時期らしく、空いていた最後の一室を取ったのだ。
なまえはベッドを見つめる。
ポルナレフも見つめる。
そしてお互い顔を見合わせた。
「俺が床で寝る」
真っ先にそう言ったのはポルナレフだった。
「え?」
「レディを床で寝かせるわけにいかんだろ」
「でも旅で疲れてるのはポルナレフも同じだよ」
「いやいや」
「いやいやじゃなくて」
しばらく言い合った。
けれど結論は出ない。
床は石造りで固い。
毛布も足りない。
ソファもない。
そして最終的に。
「……二人で寝る?」
おずおずとなまえが提案すると。
ポルナレフは露骨に顔をしかめた。
「それはそれで問題だろ」
「なんで?」
「なんでってお前なぁ……」
言葉に詰まる。
その反応がおかしくて、思わず笑ってしまった。
「もしかして意識してるの?」
「当たり前だろ!」
「ふふっ」
「笑うな!」
耳まで赤くなっている。
その様子が妙に可愛くて、ますます笑いが込み上げた。
結局。
ベッドの端同士を使う。
お互い背中を向けて寝る。
そういう約束で話はまとまった。
「いいか?本当にちゃんと離れて寝ろよ?」
「それ、私の台詞なんだけど」
「俺は紳士だからな」
「自分で言う?」
そんな軽口を交わしながら灯りを消す。
部屋はすぐに静寂に包まれた。
窓の外から聞こえる風の音だけが微かに耳に届く。
背中越しにポルナレフの存在を感じる。
見えない。
けれど近い。
近すぎる。
いつもは平気なのに。
こうして同じベッドにいるだけで妙に意識してしまう。
旅を続けるうちに気付いていた。
ポルナレフの笑顔が好きだった。
真っ直ぐなところも。
仲間を大切にするところも。
時々見せる不器用な優しさも。
気付けば、異性として見るようになっていた。
だから。
眠れるはずがなかった。
(近い……)
背中の向こうにいるだけなのに。
心臓がうるさい。
何度寝返りを我慢しただろう。
ポルナレフも眠れていないのか、時折シーツが擦れる音が聞こえる。
しばらくして。
ようやく呼吸が落ち着いてきた頃だった。
ふいに。
背中に熱を感じた。
「……っ」
身体が強張る。
何かが触れた。
いや。
誰か、なんて分かりきっている。
次の瞬間。
そっと腰に回される腕。
広い胸板が背中に触れる。
温かい。
あまりにも温かい。
ポルナレフだった。
「……」
声が出ない。
頭が真っ白になる。
抱きしめられている。
後ろから。
優しく。
けれど逃がさないように。
彼の腕の中に閉じ込められている。
規則正しい鼓動が背中越しに伝わってくる。
首筋にかかる微かな吐息。
髪をかすめる体温。
すべてが鮮明だった。
どうして。
何で。
そう聞きたいのに。
声が出ない。
振り返ることもできない。
もし目が合ったら。
何かが変わってしまいそうで。
怖かった。
だから。
なまえはただ固まったまま。
一晩中、その腕の中で朝を迎えた。
────
夜明け前の砂漠は、不思議なくらい静かだった。
ホテルの薄いカーテンの隙間から差し込む光が、部屋を淡く照らしている。
なまえはゆっくりと目を開けた。
胸がどくりと鳴る。
昨夜のことを思い出して。
恐る恐る隣を見る。
ベッドは空だった。
ポルナレフの姿はない。
「……あれ?」
しばらく見つめる。
けれどそこには、誰もいない。
夢だったのだろうか。
そう思おうとするのに。
昨夜触れていた場所だけが、まだ熱を持っている気がした。
「いや……夢じゃあないよね……?」
思わず呟く。
けれど答えてくれる人はいない。
身支度を整えながらも、心臓は落ち着かなかった。
もし昨夜のことが本当だったら。
もしポルナレフが覚えていたら。
どんな顔をすればいいのだろう。
鏡に映る自分の頬は少し赤い。
気のせいではない。
あの腕の感触も。
鼓動も。
吐息も。
全部覚えている。
忘れられるはずがなかった。
「……どうしよう」
小さく呟いてから首を振る。
考えても仕方ない。
まずはみんなのところへ行こう。
そう自分に言い聞かせて。
なまえは部屋の扉を開け、朝食を取るため食堂へ向かった。
長い移動の疲れを抱えながら部屋の扉を開けた瞬間、なまえは足を止める。
「……あれ?」
後ろから入ってきたポルナレフも同じように固まった。
部屋の中央。
そこにあったのは、セミダブルほどの大きさしかないベッドが一つ。
それだけだった。
「マジかよ……」
ポルナレフが頭を抱える。
「ベッド、一つしかないじゃあねぇか」
「他に空いてる部屋は?」
「埋まってるって言ってただろ」
言われてみればその通りだった。
観光客が多い時期らしく、空いていた最後の一室を取ったのだ。
なまえはベッドを見つめる。
ポルナレフも見つめる。
そしてお互い顔を見合わせた。
「俺が床で寝る」
真っ先にそう言ったのはポルナレフだった。
「え?」
「レディを床で寝かせるわけにいかんだろ」
「でも旅で疲れてるのはポルナレフも同じだよ」
「いやいや」
「いやいやじゃなくて」
しばらく言い合った。
けれど結論は出ない。
床は石造りで固い。
毛布も足りない。
ソファもない。
そして最終的に。
「……二人で寝る?」
おずおずとなまえが提案すると。
ポルナレフは露骨に顔をしかめた。
「それはそれで問題だろ」
「なんで?」
「なんでってお前なぁ……」
言葉に詰まる。
その反応がおかしくて、思わず笑ってしまった。
「もしかして意識してるの?」
「当たり前だろ!」
「ふふっ」
「笑うな!」
耳まで赤くなっている。
その様子が妙に可愛くて、ますます笑いが込み上げた。
結局。
ベッドの端同士を使う。
お互い背中を向けて寝る。
そういう約束で話はまとまった。
「いいか?本当にちゃんと離れて寝ろよ?」
「それ、私の台詞なんだけど」
「俺は紳士だからな」
「自分で言う?」
そんな軽口を交わしながら灯りを消す。
部屋はすぐに静寂に包まれた。
窓の外から聞こえる風の音だけが微かに耳に届く。
背中越しにポルナレフの存在を感じる。
見えない。
けれど近い。
近すぎる。
いつもは平気なのに。
こうして同じベッドにいるだけで妙に意識してしまう。
旅を続けるうちに気付いていた。
ポルナレフの笑顔が好きだった。
真っ直ぐなところも。
仲間を大切にするところも。
時々見せる不器用な優しさも。
気付けば、異性として見るようになっていた。
だから。
眠れるはずがなかった。
(近い……)
背中の向こうにいるだけなのに。
心臓がうるさい。
何度寝返りを我慢しただろう。
ポルナレフも眠れていないのか、時折シーツが擦れる音が聞こえる。
しばらくして。
ようやく呼吸が落ち着いてきた頃だった。
ふいに。
背中に熱を感じた。
「……っ」
身体が強張る。
何かが触れた。
いや。
誰か、なんて分かりきっている。
次の瞬間。
そっと腰に回される腕。
広い胸板が背中に触れる。
温かい。
あまりにも温かい。
ポルナレフだった。
「……」
声が出ない。
頭が真っ白になる。
抱きしめられている。
後ろから。
優しく。
けれど逃がさないように。
彼の腕の中に閉じ込められている。
規則正しい鼓動が背中越しに伝わってくる。
首筋にかかる微かな吐息。
髪をかすめる体温。
すべてが鮮明だった。
どうして。
何で。
そう聞きたいのに。
声が出ない。
振り返ることもできない。
もし目が合ったら。
何かが変わってしまいそうで。
怖かった。
だから。
なまえはただ固まったまま。
一晩中、その腕の中で朝を迎えた。
────
夜明け前の砂漠は、不思議なくらい静かだった。
ホテルの薄いカーテンの隙間から差し込む光が、部屋を淡く照らしている。
なまえはゆっくりと目を開けた。
胸がどくりと鳴る。
昨夜のことを思い出して。
恐る恐る隣を見る。
ベッドは空だった。
ポルナレフの姿はない。
「……あれ?」
しばらく見つめる。
けれどそこには、誰もいない。
夢だったのだろうか。
そう思おうとするのに。
昨夜触れていた場所だけが、まだ熱を持っている気がした。
「いや……夢じゃあないよね……?」
思わず呟く。
けれど答えてくれる人はいない。
身支度を整えながらも、心臓は落ち着かなかった。
もし昨夜のことが本当だったら。
もしポルナレフが覚えていたら。
どんな顔をすればいいのだろう。
鏡に映る自分の頬は少し赤い。
気のせいではない。
あの腕の感触も。
鼓動も。
吐息も。
全部覚えている。
忘れられるはずがなかった。
「……どうしよう」
小さく呟いてから首を振る。
考えても仕方ない。
まずはみんなのところへ行こう。
そう自分に言い聞かせて。
なまえは部屋の扉を開け、朝食を取るため食堂へ向かった。
1/5ページ
