大切な人
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数ヶ月後。
長い入院生活が、ようやく終わった。
病院の正面玄関を出ると、少し冷たい風が頬を撫でた。
なまえは目を細める。
「外、久しぶり」
「……数ヶ月だろ。騒ぐほどじゃあない」
そう言いながら、露伴はなまえの歩調にきっちり合わせて歩く。
車に乗り込む前、露伴は鞄を開いた。
「これを渡しておく」
差し出された一枚の紙を見て、なまえは息を呑む。
「……婚姻届?」
「僕の記入欄はすでに書いてある。不備がないか、三回確認した」
覗き込むと、露伴の筆跡で整然と埋められた欄。
名前も本籍も、印鑑の位置まで完璧だ。
「いいか、くれぐれも書き間違えるんじゃあないぞ」
「そこ、そんなに念押す?」
「当然だ。訂正は手間が増える」
あまりにも事務的で、あまりにも露伴らしい。
「……露伴」
「なんだ」
「本当に、私でいいの?」
露伴は一瞬だけ黙り、視線を逸らした。
「君以外に、この紙を用意する理由がない」
それだけ言って、婚姻届をなまえに渡す。
「ふふ、家で書くね」
「それでいい」
車は静かに走り出した。
───────────
露伴の家は、相変わらず静かだった。
「部屋はここが空いているから、自由に使ってくれてかまわないよ」
露伴が指し示したのは、露伴が使っている寝室の隣だ。
「……一緒じゃあないの?」
からかうように言うと、露伴の動きが一瞬止まる。
「……何を言っている」
「夫婦なんでしょ?」
「それとこれとは話が別だ」
一度、咳払い。
「必要なら……柔軟に考える」
明らかに動揺しているのが分かる。
なまえは小さく笑った。
机の上。原稿の隣に、婚姻届が置かれる。ペンを持つ手が、ほんの少し震えた。
憧れていた形とは違う。
けれど、これ以上なく露伴らしい。
名前を書き終えると、露伴が背後から覗き込む。
「……問題ないな」
「また確認?」
「当然だ」
紙を丁寧に揃え、露伴はしまい込んだ。
その足で、二人は役所へ向かった。無駄な言葉も、派手な演出もない。
受付で婚姻届が受理され、淡々と事務が進む。
それだけのことだった。だが、その日。
岸辺露伴となまえは、晴れて夫婦となった。
長い入院生活が、ようやく終わった。
病院の正面玄関を出ると、少し冷たい風が頬を撫でた。
なまえは目を細める。
「外、久しぶり」
「……数ヶ月だろ。騒ぐほどじゃあない」
そう言いながら、露伴はなまえの歩調にきっちり合わせて歩く。
車に乗り込む前、露伴は鞄を開いた。
「これを渡しておく」
差し出された一枚の紙を見て、なまえは息を呑む。
「……婚姻届?」
「僕の記入欄はすでに書いてある。不備がないか、三回確認した」
覗き込むと、露伴の筆跡で整然と埋められた欄。
名前も本籍も、印鑑の位置まで完璧だ。
「いいか、くれぐれも書き間違えるんじゃあないぞ」
「そこ、そんなに念押す?」
「当然だ。訂正は手間が増える」
あまりにも事務的で、あまりにも露伴らしい。
「……露伴」
「なんだ」
「本当に、私でいいの?」
露伴は一瞬だけ黙り、視線を逸らした。
「君以外に、この紙を用意する理由がない」
それだけ言って、婚姻届をなまえに渡す。
「ふふ、家で書くね」
「それでいい」
車は静かに走り出した。
───────────
露伴の家は、相変わらず静かだった。
「部屋はここが空いているから、自由に使ってくれてかまわないよ」
露伴が指し示したのは、露伴が使っている寝室の隣だ。
「……一緒じゃあないの?」
からかうように言うと、露伴の動きが一瞬止まる。
「……何を言っている」
「夫婦なんでしょ?」
「それとこれとは話が別だ」
一度、咳払い。
「必要なら……柔軟に考える」
明らかに動揺しているのが分かる。
なまえは小さく笑った。
机の上。原稿の隣に、婚姻届が置かれる。ペンを持つ手が、ほんの少し震えた。
憧れていた形とは違う。
けれど、これ以上なく露伴らしい。
名前を書き終えると、露伴が背後から覗き込む。
「……問題ないな」
「また確認?」
「当然だ」
紙を丁寧に揃え、露伴はしまい込んだ。
その足で、二人は役所へ向かった。無駄な言葉も、派手な演出もない。
受付で婚姻届が受理され、淡々と事務が進む。
それだけのことだった。だが、その日。
岸辺露伴となまえは、晴れて夫婦となった。
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